黒甜郷裏 見慣れた公園はオレンジに染まっている頃。私はベンチに座りどこを見るでもなくボンヤリと一人の時間を過ごしていた。
何の気まぐれで此処へ来て何の為……なんて理由も特になく、する事も考える事も何も無く。ただただ漠然と独りであることへの安らぎに浸るばかり。
そんな折、些細な疑問が漠然とした意識の中から思考を呼び覚ます。
(あれ、でもここってこんなに人居ない事あったっけ……?まだこの時間なのに……?)
ふと見上げたならいつの間にか暗さを増してゆく空。自分も帰らぬ理由はないだろうとばかりに時の流れを報せていた。
(帰ったら何しよっかなぁ)
そんな事を考えながら私は頭上から目の前へと視線を戻す──
「──!あれ、あの人……!きっとそう……!」
1971