カチカチとキーボードを叩く音だけが響く。はぁっと吐く音が聞こえたのは自分の溜息だ。目の前のベッドで眠っている彼の事を考えていると自然と出てしまう。休憩を兼ねてパソコンの手を止め立ち上がり、すっかり暗くなった外を眺めてカーテンを閉める。その音がうるさかったのか、ずっと眠っていた彼の目がゆっくりと開いた。
「ノア?」
少し掠れた小さな声が、ドキッとさせる。こんなに弱っていても彼は美しい。
「ハイ、カズ。目が覚めた?」
虚な瞳でこちらを見つめられて、それでも綺麗だなと思ってしまった。
「ここ…」
「病院だよ。覚えてる?倒れたの」
「…ん、誰かが呼んでくれたピョン?」
私のアシスタントをするようになって、ピョンを強制した。今はこうやってエージと話しをするのと同じように、私にも話してくれる。
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