温泉旅館に行く沢深② ごくありふれた、自然な流れで俺と深津さんは再会した。忙しくてしばらく日本に帰っていない時期もあったけど先輩たちの連絡先はそれぞれ知っていたし、別に縁が切れたわけでも音信不通ってわけでもなくて、会おうと思えばいつでも会えると気楽に思っていた。
成人してしばらくした頃にイチノさんから山王のOB会の知らせがあった。その年の帰国のタイミングがたまたま一致して、俺は久しぶりに皆の集まりに顔を出すことにした。それがすべての始まりだった。
深津さんは大学まででバスケを辞めていた。そのとき現役でバスケを続けていたのは河田さんと松本さんの二人だけで、河田さんが国内のプロリーグ、松本さんが実業団選手。他の先輩たちはみんな就職していて、社会人になったという事自体がなんだか新鮮だった。
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