愛しみのワルツ 深津さんのあの目がこちらを見ている。
あぁ、これは夢だと自覚する。
深津さんは何も言わずにじっとこちらを見つめるだけで、オレに何かアクションを起こすわけでも、表情を変えるわけでもなく静かに佇んでこちらを見ている。
何か言ってほしいな。
教えてほしい、あなたがなぜずっとオレを見ているのか。
知りたくて手を伸ばしても届かなくて、なぜかオレの足は動かなくて、深い泥沼の中にいるような感覚。
走りだそうと、もがけばもがくほど動けなくなっていく。
なぜそんな、手の届かない場所でオレを見つめているのか教えてほしい。
最後に思うのはいつもこれで、それからゆっくりと目を覚ます。
静かに目を開けて、視界に入った自室の天井を見上げた。
15078