あまりか短、中編まとめ言葉の甘みは砂糖のおかげ?
「理解さん」
そう呼ぶ声が明らかにほかの人を呼ぶ時とはほんの少し違うトーンだと気づいたのは、いつからだったろうか。ふみやを呼ぶ時などには見えないほのかな甘さが声に混ざっている。ただ、その甘さの原因なんて理解には分からない。分かるはずもなかった。ただ、名前を呼ぶだけ。その行為に差が生じる原因なんて、さっぱりわからない。でも、それによって嫌な気持ちになることはない。それが、理解にとって一番の悩みだった。
屋根裏部屋に天彦を呼び出して、甘さの原因についてひと思いに聞いてしまおうかと何度思っただろうか。それを行動に起こせないのは、また言いふらされてしまうかもしれないという先生への不信感。それと、あのわずかな誤差のような甘さに恐らく気づいていないだろう天彦に聞いてしまってもいいのだろうかという疑問によるものだった。最近はこのことについて考えては気が付くと9時になってしまっている。日記はいつも通り何も書くことがない素晴らしい状態なので何ら問題ないのだが、本を読むことさえままならないのは気に食わない。これ以上睡眠前の秩序を乱すわけにもいかない。今日はひとまず寝ることにして、また明日対策を練ることにしよう。
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