お題「♡」 交際をはじめてからの降谷は、ずっとツンツンだ。ツンデレではない。デレがないので、ツンツンである。
赤井は降谷から届いたメッセージを見て、思わず微笑んでいた。
『たまたまその日は空いているので、いいですよ』
これは、赤井が送ったデートの誘いに対する降谷の返事である。
赤井がデートに誘うと、降谷は、“たまたま空いていたから”という言い訳を枕詞にして返事をしてくる。もちろん、それは嘘だ。多忙な彼がたまたま暇になることなど、まずあり得ない。その証拠に、降谷の部下である風見から、「赤井さんとの約束を守るために、降谷さんは鬼のように仕事してますよ」と、たびたび密告がある。
自分に対する言葉、態度とは裏腹に、降谷は自分とのデートの時間も大事にしてくれようとしているのだ。そんな降谷の様子を、彼の周囲にいる人間から聞くたびに、赤井は嬉しくてたまらなくなる。と同時に、なぜ、自分の前ではツンツンした様子しか見せてくれないのだろうかと、疑問に感じてもいた。
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