恐怖の芽「あなたは私を怖いと思ったことはないのかね」
頭によぎった疑問がするりと口から出たのは、先ほどまでの行為の勢いが残っていたからかもしれない。ガンガディアは軽くなった口を手遅れながら押さえて、横に寝転がっているマトリフを見下ろした。
「なんだよいきなり」
マトリフは天井をぼんやりと見上げたまま言った。その身体に幾つもの噛み跡が残っている。ガンガディアがつけたそれは、所々に血が滲んでいた。
ガンガディアは行為中に興奮して抑制が効かなくなると、欲望のままにマトリフの身体を噛んでしまう。普段日に当たらない白い肌にその噛み跡は痛々しい。ガンガディアは再び反省の念に襲われた。
「早く回復呪文を」
「めんどくせぇ。明日でいいだろ」
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