光に溶ける 「この世界で一番美しいものってなんだろうね?」
ここの砂浜は雪のように白かった。
純白の砂浜が、なだらかな弧を描くように遠くの海岸までのびている。ティースは照り付ける日差しに目をしばたたきながら、さらさらとしたその砂の上に腰を下ろした。長い栗色の睫毛の間から、夢見る少年の碧の瞳が垣間見える。
イサークはわずかに周囲を見渡すと、再び少年に目を落とした。
「例えば、ここの砂浜とかな?」
「たしかに、きれいだけどね・・・」
イサークが適当に答えたことくらい、十二歳のティースにでも分かった。
「船長に聞いてみな。あの人はいろんな美しいものを見てきたろうから」
昼下がりの晴天。先日の蒸し暑い空気を押し流すかのような風が、時折吹いている。浜から突き出したむき出しの岩々は波と風により長い年月をかけて削られ、磨かれて、自然のアーチのようになっていた。その上の緑の茂みにカモメが数羽、羽を休めている。
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