52Hzの号哭賑やかな神社の中で3人は邪魔にならないように歩き、虎杖が販売店の人に話しかけた。
「すんません!虎杖です!」
「虎杖さまいらっしゃいませ!雀様と燕様なら中でお待ちですよ。こちらです」
「ありがとうございます!二人ともこっちだって!」
虎杖の後に二人は付いていく。神社の普段見えない部分、入らない場所に3人は足を踏み入れて巫女の後をゆっくりと歩き、やがて一つの部屋の前に辿りついた。
「雀様燕様、虎杖さまとご友人がいらっしゃいました」
「あい」
「どーぞ」
部屋の中から聞こえたのは幼いふたつの声。
巫女が正座をして丁寧に障子をすっと開き、虎杖はそれにお礼を言って中にはいる。
「すーちゃんつーくん!連れてきた!」
「ほんとにきちゃったのでしゅ」
「ほんとにこんせにいるのでしゅ」
居たのは白く儚そうな双子の女の子と男の子。そしてそれぞれの膝にいる大きな白いまんじゅうと黒いまんじゅう。
「あーそれが前に言ってた他の式神?」
「さとるくんとすぐるくんでしゅ」
「2匹ともちょっとどいてくだしゃい」
しきがみ?さとるくんすぐるくん?
伏黒と釘﨑は頭上に「?」を飛ばしながらそれらを見ていた。
見ていたら、どこかで何かがそっと染み出して来るような感覚が
「…?」
「はじめまちて、このじんじゃにすんでゆすずめでしゅ」
「おなじくつばめでしゅ」
「…伏黒、恵……」
「釘﨑野薔薇…」
双子はぺこりと頭を下げて挨拶をした。釘﨑も伏黒も同じように挨拶をする。幼い子供なのに、なんとも子供らしくない。
「とりあーじゅおすわいくだしゃい」
「そちゃですが」
「あ、いやどうも…」
燕が伏黒の座った前に淹れたお茶をそっと渡す。その時偶然、動いた伏黒の指先が燕の手に触れた。
そして伏黒は目を見開き、燕をじっと見た。
「…あの…」
「…すーさん」
「!」
伏黒から聞き慣れた、始めて聞く音と言葉に釘﨑以外が反応した。
「…す、みません……手を、触ってもいいですか」
「………どーじょ」
その声に、燕はきゅっと覚悟を決めて伏黒の手に小さな手を乗せた。その手は男性になる途中の暖かくて硬い大きなものだった。小さな柔らかい手はあっという間に包まれて、でも離すまいと握りしめられた。
「すーさん……生きてるんですね…」
「……あい、ここにいきてますよ」
「そうですか…………よかった……」
泣きそうな、嬉しそうな歪んだ顔。燕は目を逸らすことなく伏黒の顔をじっと見てしっかりと答えた。
「…釘﨑!」
「えっなに!?ぶふっ」
虎杖はその光景を見て、すぐに釘﨑の顔に雀を押し付けた。
顔にぶつかる痛い帯と、それをやった虎杖に怒りをぶつけるはずだった。
「…………なによ、これ」
「…」
「なんなのよ…居るならいるって、最初から言いなさいよ…!」
「…ごめんなしゃい」
釘﨑は顔に貼り付けられた雀をゆっくり抱きしめて方を震わせる。
「この私に隠し事なんて、いい度胸してんじゃない…」
「のばちゃん」
「前は全然呼んでくれなかったくせに」
「…うん、呼べなくてごめんなしゃい」
雀はよちよちと釘﨑の頭を撫でた。それからゆっくりと離れて
「虎杖ィ!!なんで早く言わなかったんだアァ!?」
「えーーー!?」
「いつからだ!いつからこのこと隠してやがった!」
「いや俺も知ったの最近で!あーでもこの感じ懐かしいー!」
「虎杖いーーー!!」
何度も見てきた懐かしい光景と、またこれかという呆れが伏黒を襲う。燕は離れない伏黒の手をそのままに一人で、せっせっせーのよいよいよい、と遊んでいた。
「それで、なんですーさんが二人いるんだ」
「え?」
「そういえばそうよね」
落ち着いた二人は改めて座り直して雀と燕を見て言った。虎杖は