武士は食わねど、と何かで聞いた言葉ではあるけれど。 澄み渡った秋の空。
夏と冬の間と呼ぶに丁度いい晴天の下、佐和山の城にて三成は気付いた。
火の香りがする、と。
「何をしている」
「あっ、三成様ー! 呼びに行こうと思ってたトコだったからよかった!」
「焼き芋よ、丁度火の扱いに長けた男が客に来ている以上その腕前も見せてもらうついでよついで」
三成の私室から出てすぐの庭。
落ち葉を集めた一角には優しい炎が立っていた。
そこにいる男三人のうち二人は三成の左右、島左近に大谷吉継は中に入っているであろう芋の様子を眺めていた体勢そのままで三成を見る。
そして、火の調整をしている男はにこりと笑んでから口を開いた。
「もうじき焼き上がりますぞ、三成殿も是非」
「貴様も貴様だ、真田。決戦の前に力を使うなど……」
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