朝のるすぱる自陣「あいつ…また寝坊かよ」
セレネル探偵事務所の入口ドアは、まだ昨夜戸締りした状態のまま鍵が掛かっている。
現在時刻は業務開始30分ほど前。早めに出勤してくる俊のためにも、いつもならもう鍵は開いているはずの時間だ。
俊は慣れた様子で合鍵を取り出しドアを開け、事務所へ入ると一直線に奥の居住スペースであるせれるの部屋の方へと向かった。
扉の前へ立つとコンコン、とマナーとしてノックをする。
「おい、朝だぞ。また寝坊か?」
中から返事は無い。入るぞ、とひと声かけドアノブをひねる。
俊が部屋の中へ入ると、ベッドの方からゴソゴソと衣擦れの音が聞こえて来る。
「いつまで寝てんだ。もうすぐ事務所開けんぞ」
「んん〜~……」
俊の気配で目を覚ましたらしいせれるは寝返りをうちながら返事とも取れない呻き声をもらしている。
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