剣の人と死んだ私の話ふわふわと浮かんでいるような気がする。
寒くもなければ暑くもなく、水の中のような空の中のような不思議な感覚だ。瞼が重く、目も開けられなければ声も出せない。只々、何処かを漂っているようだ。
不意にくんっと、何かに引っ張られるような振動が伝わった。するりと私に巻きつき、抱え込み、引き上げる。
「逃さん」
低い声が、聞こえた。
瞼に掛かる明るさで目が覚めた。豪勢な装飾のされた天井が見える。視線をずらすと、其処には人が居た。その姿を見て思わず目を見開く。
「起きたか」
褐色の肌に長い髪。現実では会えない人が目の前にいる。私は夢を…寝ているの…?いや、それにしては場所がいつもの場所ではない。此処はどこなのか。私は何故寝ていたのか。聞きたいことが山ほどあるのに、声を出そうにも空気音しか出ない。その様子を見たその人は「落ち着け」と私の顔を覗き込む。
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