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    koharu_mnk

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    koharu_mnk

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    薬売りさん達の子供時代が、今の性格と真逆な感じだと面白いよねって事で書きました。
    段々と何を書きたいのか分からなくなってきたので、供養です。突発的に書いたので多分話がごちゃついてます。長い・話す・自我あるの3拍子。

    子供と女中の話今日も今日とて、自室で勤めを果たしていた。
    ここは、モノノ怪を切る為の剣士を育てる、宿舎の様な場所。其処で女中として、私は働いている。基本的には身の回りの世話。その他、太極様を始めとした、他の方々の仕事に着くこともある。

    今書いている書物が、そうだ。上の方に任されたお勤めである。こうした別の勤めが入った場合、宿舎の仕事は他の者に任せるのが決まりだ。仕事を幾つも抱えては効率が悪い。円滑に進むようにと、決められている。

    筆を走らせ、ひたすら書物と向き合っていると、遠くからドタドタと走る音が聞こえた。それは次第に近くなり、私の部屋の前で止まる。
    スパンッッ!!
    勢いよく障子が開かれた。其処に立っていたのは、長い亜麻色の髪を下ろし、息を乱した子供。

    「…障子は静かに開けましょう。"離"の」
    彼は、"離"の剣の剣士として育てられている子供。頭脳が良く、手先が器用で力も強い。体力はあまり無いが、それでも将来は有望だとお目付役件師の者が仰っていた。持っていた筆を置いて、彼の方へ体を向ける。
    離は、何か気に食わないことでもあったのか不満げな顔をして、私の小言に答えることもなく、ズカズカと部屋に入ってくる。

    そのまま私の元まで来ると、倒れるかの様に、私に抱きついた。それで察しが着く。大方、師の者に扱かれたのだろう。馬が合わないのか、こういった事はよくある。離は、その度に稽古を抜け出してはこうして、私の元へ来る。将来は有望だと言われてはいるが、稽古のたびに高頻度で抜け出し、師とは喧嘩をし、暴れる事はないものの、時には部屋のものを壊すので困る。

    「また、師と喧嘩でもしたのですか?」
    「…」
    ぎゅうと腰に付いたまま何も言わない。これは当たりだと思い、彼の乱れた髪を直す。
    「離の」
    一言、名を言うと彼は、そろそろと腹に埋めていた顔を上げた。瑠璃色の瞳が揺れる。
    「…おれは悪く無いです」
    「モノノ怪なんぞ、切れればそれでいい。人間のことなんて二の次で良い」
    「おれ達の勤めは、モノノ怪を切ることであって、人間を護ることじゃ無い」
    「優先すべきは、モノノ怪を切ることだ。それなのに…」
    アイツは頭に花でも湧いてるのか。と子供らしからぬ師への罵倒が、次々出てくる。

    離を見ている師は、情が深い人だ。確かに、剣士の勤めはモノノ怪を切ることだが、その人はモノノ怪が人に危害を加える事を、酷く嫌う人だった。だから、モノノ怪が形を成した後、出来る限り被害が少なくなる様動く。一方、離は情がないわけでは無いが、合理的な面が目立つ。ことごとく反対で、水と油の様な二人。

    「確かに、あなた方剣士の勤めはモノノ怪を切る事です。離の言う事は間違っていないですよ」
    肯定すればパッと顔を上げて、嬉しそうな顔をする。そうだろう!と言わんばかりだ。
    「…離の。モノノ怪が形を成すのはなんですか?」
    「人の、因果と縁…」
    「そうですね。では、退魔の剣を抜く為の条件は?」
    「モノノ怪の形と、真と、理の三様」
    「そうです。よく覚えていますね」
    頭を撫でれば、笑って手に擦り寄る。
    「ここ迄、よく覚えている離であれば。師の言いたい事が分かるのではないですか?」
    「…」
    また、むすりとした顔をして、私の腹に頭を埋める。
    「モノノ怪と人間は、切っても切り離せぬ関係です。モノノ怪を切る事が最優先ではありますが、果たす為には、人間の協力も必要になります」
    「…分かっています」
    「そうですね、貴方は賢いですから」

    まだ、子供はまだ現世へ降り立つ事はできない。が故に、人間への理解が薄い。"人間"というものが今の所モノノ怪を生み出す生き物ぐらいの認識なのかもしれない。
    だが、ここでの生活を見ていても、口の悪さが目立つものの、他者を想う気持ちはあるのがわかる。現世で降り立つようになれば、考え方も変わるだろう。少し癖のある長い髪を、梳く様に撫でる。
    「離の。モノノ怪というものは、人間の様々な事情や感情に結びつきます。時には、酷く残酷な理を目にしなければならないことも、あるでしょう」
    「人間を、嫌いになることもあるでしょう。ですが、皆が皆、そうではありません」
    「離と師、反対の者がいる様に。人間にも善い悪いがあります」
    「救う救わないに関係なく、その中で自身の出来る事を、行えば良いのですよ」

    「…」
    そろりと顔を上げた離に、微笑み返す。彼はまだ、現世に出た事は一度もない。師や他の者の話でしか、人間を知らない。だからこそ、彼の師の様なやり方に疑問が出るのだろう。
    「あね様は、全ての人を救わずとも良いと、思うのですか?」
    「そうですね…。救えるものがあるのなら、救うべきとは思います。ですが、それを貴方達剣士が身を減らしてまですることではない…とも思います」
    「…」
    「一人の力量には限度があります。なので、無理はせず、出来ることを行えば良いのですよ」
    そういえば、離は、一度目を閉じ考えてから、体を起こした。抱きついていた体制から、向かい合う様な形に変わる。これはもう、大丈夫になった時の体制だ。

    「さぁ、師が待っていますよ」
    「……」
    「離の?」
    「…嫌だ」
    大丈夫ではなかった。まだ何かあるのかと、離からの言葉を待っていると、ぽつりぽつりと口から出たのは、私の事だった。
    「あね様は、暫くは部屋に籠ると聞いた。おれ達の事ではなく、お上の方々の仕事でと」
    「だから嫌だ。まだ居る」
    邪魔はしないから、此処に居させてくれと言う離。要するに、構ってもらえないのが嫌だから、まだここに居座るという事だった。顔を見るなり、先ほどのむくれ顔は何処はやら。もしや、これが本題だったか…。構われるのは他の者でも良いだろうに、何故こうも好かれているのか。良い事ではあるが、これが続くと流石に勤めに支障が出る。
    「離の。私にも勤めがあります」
    「おれ達の世話も、勤めでしょう」
    「えぇ、確かにそうですが。今回のは早急にと仰せつかっています。遅れるわけにはいかないのですよ」
    「…」
    また、不満げな顔をする。こう見えて頑固な面がある離だ。てこでも動かないだろう。

    「ですから、こうしましょう」
    「私のお勤めが終わるまでに、離がきちんと稽古をして、やるべき事を行ったのであれば、次の日は1日、離と共に居ましょう」
    「!」
    目の色が変わった。言い方は良くないが、子供にはこれがよく効く。
    「ただし、誤魔化しをした場合には、無効としますからね。きちんと貴方の師にも、女中達にも確認します。宜しいですね」
    「本当に?約束?」
    「はい、約束です」
    「…わかりました」
    離は、すっと立ち上がって背を向ける。今はまだ子供だが、いつの日か立派な剣士となり、モノノ怪を斬るべく現世へ行くのだろう。そう思うと、なんだか寂しい気もする。

    「離の」
    「はい」
    「貴方が、立派な剣士となるのを、楽しみにしていますよ」
    そう言えば、離は目を大きくさせた後、嬉しそうに笑った。
    「はい、すぐに」
    そして、開けた障子を閉めて、パタパタと来た道を戻っていった。

    「世話をかけた」
    ふと影が掛かる。振り返ると、其処にいたのは離の剣に宿る、神義様。何かあればここへ来ることを知っている為、離が稽古を抜け出せば、必ずここへ来る。
    「いえ、これも勤めですから」
    薬売りと神義様もとい剣は、対の存在だ。どちらが欠けてもいけない。そのため、剣士になると決まった時から常に子供のそばには、剣があり神義様がいる。大きくなれば、神義様が稽古を見てくれることもあるが、子供のうちは無理だ。体格然り、力然り。その為、見守りに徹するのが殆ど。
    「神義様も、大変でございますね。頭が回るお転婆が使い手では」
    「どうだろうな」
    「もう少し、落ち着きがあると、良いのですがね…」
    「…そうだな」
    暫く二人で、離が出ていった障子を見ていたが、私の勤めがあることを思い出し、私は筆をもち、神義様は部屋を出ようとする。

    「…礼を言う」
    ぽんと私の頭に手を乗せて、神義様は部屋を出た。これも、毎回神義様は部屋を出て行くたびに行う。
    「…お勤めしなきゃ」
    約束をしたからには、守らねばならない。
    私は持ったままの筆をようやく、動かした。

    その後、無事約束を守った離に1日付きっきりになったと思いきや、あの時の「約束をする」という事に味を占めたのか、頻繁に部屋に来ては約束をつける様になったのは、また別の話。
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