別れの時熱すぎず,寒すぎず、気持ちがいい程よい気候。
頭上から差し込む木漏れ陽、背には年月を重ねた太い立派な大樹。
遠くに聞こえる陽気な歌声と笑い声。
いく月も観察し、調べ,悩んだ。
そして彼らに託す覚悟を決めた。
両の腕に抱く慣れ親しんだ大切な二つのぬくもり。
長年共にした我が子同然の双子。
だが、時はきた……いやきてしまった。
ぎゅっと優しく強く抱きしめる。
「最後に,お前たちに俺から『贈り物』をやる。お前たちが強く,健やかに育つように」
男の子の手にルチルクォーツを、女の子の手にアイリスクォーツを握らせてやる。
溢れた涙からできた奇跡の石。
ただ流したものではない、心から溢れでた思いが凝縮した石。
「
『ルチル』、『アイリス』、強い意志をもって愛を知りなさい。そして慈悲の心をもって愛で癒しなさい
」
名は子に初めに与えられる『愛』
もう一度しっかり抱きしめて、そっと双子を赤い布で包み間にポストのAFを忍ばせ大樹の根本に置く。
じっとこっちを見つめる大きな4つの瞳。
「いつか、もう一度……」
流れる涙で途切れた声。
これ以上は言葉にならず二人の額に守りの口付けを。
陽気なキャラバンの音が近づけば立ち上がりグッと奥歯を噛んでその場を離れ、大樹の影の身を隠す。
途端に火がついた様に泣き出す双子。
身を引き裂かれる思いでこらえていれば泣き声に気づいたらしいキャラバンの人々が駆けてくる。
人々に抱かれあやされ連れて行かれる双子。
その姿が遠く見えなくなるまでずっと見守り、そして目を閉じる。
自分の役目が終わった。
グリっと乱暴に目を擦り、マナの樹の元に帰る為走り出す。
いつかまた、出会えるその日を信じて……。