始まりのAF大きな古い大木の前にふたりならんで立つ。
「ここだね」
「うん、ここだと思う」
サァァァと優しい風が互いの髪を揺らし通り過ぎていった。
この場所にしよう、ずっと前から2人で決めていた。
手の中には拾われた時からずっと持っていた小さなポストのAF。
「……できるかな…?」
不安げな妹の背にそっと手を添える。
「大丈夫だよアイリス。俺もいる。一緒なら何だってできるよ。さぁ、ほらあの『声』を思い出して」
「…うん」
遠い記憶に朧げにしか覚えていないその姿だが、その優しい『声』だけはしっかりと覚えている。
ずっと聴いていた『声』の主は、自分達にいろんなことを教えてくれた。
物語の様に、子守唄の様に、ありとあらゆる事を自分たちに伝えてくれた。
だからこそわかる。
ポストを包み込むように、互いの手を重ね合わせて目を閉じる。
ポストから込められた思いや音が聞こえてくる。
『おかえりルチル、アイリス』
唐突に『声』が脳裏に響いた次の瞬間、解き放たれたかのようにポストから膨大なマナが溢れ弾けた。
体を通り抜けていく懐かしいマナ、自分はこのマナを知っている。
ゆっくりと目を開ければそこには大木と調和するように一軒の可愛い家が建っていた。
「わぁ……!ルチル、いこう」
自然と流れてしまったであろう涙を拭いながらアイリスは落ち着いた色合いの家に自分の手をひっぱり歩き出す。
あの時脳裏に響いた懐かしい『声』に導かれるかのように二人で家の扉を開いた。
カチリ
何処かで何か動き出した,そんな気がした。