佇む夜半の出会い(のとの本編2話) シュペルノヴァの首都・パーチェ、その中にある、とある宿の自室。窓から、傾いた陽光があまく差し込み、窓枠の影が色濃くなっていく。
自室は、煎れたてのコーヒーの香りで満たされている。それは今朝、市場で、シェイドがコーヒーブレイクの際に楽しもうと購入したものであった。
シェイドは、私服でイスに座った。コーヒーカップから立ちのぼる湯気と香りをすう、と吸い込むと、満足げに顔を緩ませた。
そして、コーヒーカップに唇を寄せ、あたたかい温度が唇に伝わり始めた時だった。
「シェイドさん!来てください!」
慌ただしさを感じる、強めのノックのあと、自室の扉越しに、自分を呼ぶ声が聞こえた。思わず手が止まる。
「シェイドさーん! あれ、いないのですか?」
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