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    236goge572

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    236goge572

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    Xに画像で投稿した、ただ一緒に飴を舐めているだけの五夏の話。
    (pixivにも投稿してます)

    全年齢です。

    ただ一緒に飴を舐めているだけなので、これはキスではありません「硝子、コイツらっていつもこうなの? 」
    「まあ……大体は? 」
    「うっげぇ〜」
     放課後、教室に歌姫が来ていた。どうやら硝子を迎えに来たようだ。これから二人でどこかに出かけるらしい。
     最初は、硝子だけしか視界に入っていませんけど? という態度で、悟と傑の存在はまるっと無視して硝子にだけ弾んだ声で楽しそうに話しかけていた歌姫だが、チラッと悟と傑を見てしばし硬直した後、とてつもなく嫌なものを見たという感じで顔を顰めた。そして、コイツらはいつもこうなのか? と硝子に聞いたのだ。
     悟にしてみれば歌姫が何故そんな嫌悪感剥き出しの声音で、硝子にそんなことを聞くのか、意味がわからない。
     傑は今はただ机に向かって真面目に報告書を書いているだけだし、悟はというと、椅子を傑の席の前に持ってきて向かい合うかたちで座り、真剣に報告書を書いている傑の頬を指先でぷにっと押してみたり、つんつんと突っついてみたりを繰り返しているだけだった。あとは傑の垂れ下がる前髪を手にとって唇を押し当ててみたり。あるいはペンを持つ傑の手にそーっと触れてくすぐってみたり。すると傑が「悟やめて。集中できない」とか「ん……悟ぅ、くすぐったいよ」と、報告書を書くのを邪魔されてちょっと不満げな顔をするのだが、その顔が可愛いので、悟はちょっかいを出しつつ傑の可愛い顔をニヤニヤしながら眺めていたのだった。
     それだけのことしかしておらず、特におかしなことはしていない。
     それなのに歌姫は「お前ら男同士でベタベタベタベタ!! 」「距離感バグりすぎだろうが!! 」「二人きりの時にやれ!! 硝子に変なもん見せんな!! 」とワーワーうるさい。
    「うっせぇなあ。そんなに嫌ならさっさとどっか行けばぁ〜? 」
     悟がそう言ってから挑発するように舌をベーッと出すと、歌姫の怒りはヒートアップし
    「別に私はお前らが乳繰り合おうが何しようが正直勝手にしろって感じだけど、硝子がいる時に変なことすんなよっつってんの!! 硝子の目に悪いだろ!! 」
     と、さらに目を吊り上げた。
     だがその後、急に「ん? てか、そもそもお前らって……」と言って、何かを考えるような表情になると少しトーンダウンして悟に聞いてきた。
    「……というかさ、一応聞くけど、そもそもお前らって付き合ってんの? 」
    「オマエらって? 」
    「お前と夏油だよ」
    歌姫が突然変なことを聞いてくるから、今度は悟の方が何言ってんだ? と顔を顰める番だった。
    「俺と傑が付き合ってる? なーに言ってんの? 意味分かんねー。俺と傑は友達なんだけど? 俺と傑で変な妄想しないでくれる? 」
    「してねーわ!! 」
     そこで傑が報告書を書いていた手を止めて、悟を窘めるように言った。
    「悟。そういった妄想をするのも歌姫先輩の趣味のひとつなんだろう。人の趣味を否定するようなことを言うのはよくないよ」
    「だぁーかーらー、してねっつぅの!! 」
     般若の顔になり激昂する歌姫の肩に硝子がポンと手を置く。
    「歌姫センパイ、コイツら相手にするだけ時間の無駄ですよ。もう行きましょう」
    「でも硝子」
    「私なら大丈夫ですよ〜。慣れれば風景みたいなもので気になりません。気にしたら負けです」
     そうきっぱりと言う硝子を歌姫は思いきり抱き締める。
    「うわぁぁぁん硝子ぉぉお!! 今日はいっぱい美味しいもの食べよう!! 美味しいもの食べて変なもののことは忘れよう!! 」
     そう言って悟と傑を一度キッと睨みつけてから、歌姫は硝子を引き連れて教室を出ていった。
     去っていく二人を見送った後、傑と視線が合う。傑は悟を見て言った。
    「悟も帰ったら? 今日はせっかく任務もないんだしのんびりしなよ。私もこれ書き終わったら帰るから」
     硝子と歌姫が帰ったから、これで傑と二人きりだなーなんて思ってなんだかちょっと浮かれた気分になっていた悟は、傑がそんなことを言うものだから途端に苛ついた。
     帰れって? せっかく任務のない日だから?
     せっかく任務のない日だからオマエと一緒にいたいんだろうが。え、オマエは違うの? 俺がいない方がいいのかよ? と思うと面白くない。すっごく、面白くない。
     だから、じゃあオマエのお望み通り帰ってやるよ! と言って本当に帰ってしまおうかと一瞬思った。
     でも。
    「…………俺も、オマエがそれ書き終わるまで待ってる」
     口を衝いて出た言葉はこれだった。こっちの方が本心。だって、やっぱり帰りたくない。せっかく時間があるのなら、どうしても一緒にいたかった。
     そんな悟の心情を知ってか知らずかわからないが、傑はクスッと笑うと
    「そ。じゃあすぐ書いちゃうからちょっと待ってて」
     と言った。そして「悟が待っててくれるなら、私も嬉しい」と悟に微笑んだ。
    「…………だーろ? 」
     我ながらクソ単純だな、と悟は思う。
     つい先程までは面白くないって苛ついてたのに、傑の「悟が待っててくれるなら嬉しい」というひと言だけでもうすこぶる気分が良い。傑もやっぱり俺といれるの嬉しいんじゃん? と気持ちが浮ついて、ニヤけそうになる口元をさりげなく手で覆った。
    再び傑が机に向かい報告書の続きを書き始めたので、報告書に書きこまれていく文字をひとつひとつ、悟はただ黙って見ていた。
     悟は傑の字が好きだった。
     傑の字は本人の真面目で優しい性格が表れているような、あたたかみのある大きくはっきりとした読みやすい字ではあるのだが、完璧な美しい字というわけでもなく、ちょっと雑なのだ。そういうところも好きだ。そういうところも、全部。
    「見てて楽しい? 」
    「楽しい」
    「そうなんだ? 」
    「……傑の上手いって程上手くねぇ字見てると不思議と癒されるんだよね」
    ヘラッと笑って悟がそう言うと、傑はフフッと笑う。
    「なにそれ、褒めてるの? 」
    「めっちゃめちゃ褒めてんじゃん」
    「へぇ……それはありがとう? 」
     悟が報告書から傑の顔に視線を移すと傑もこちらを見ていて自然と目が合った。そしてしばし見つめ合ってから、なんとなくお互い笑ってしまった。
     悟の大好きな傑のすっきりした切れ長の細い目が、笑顔になると一層細くなって、三日月のように美しく弧を描く。
     綺麗だなと思う。
     傑が笑ってくれるだけで嬉しい。
     一緒にいれるだけで何をするよりも楽しい。
     悟は友達って良いものだなと思った。
     高専に入るまでは友達なんて別にいらねーと思っていたけれど。今は傑がいない生活なんて考えられない。
    「あ、悟。そろそろ君が甘いものを欲しがる頃合いだよね。私何か持ってたかな? 」
     傑はそう言って自分の鞄の中を確認する。
     悟もちょうど何か甘いものが欲しいと思っていたところだったので、やっぱり傑は何も言わなくてもすぐ気がついてくれるんだなと嬉しくなる。
    「今は飴ひとつしか持ってなかったよ。寮に帰る前にコンビニ寄ろ」
     と言って傑は、はい、と悟に個包装のいちごの飴ひとつを渡してくる。
    「オマエは? 」
    「ひとつしかないから、私はいいよ。悟が食べな」
     そう言われて遠慮なくその飴を食べようと、個包装の包みを開けようとしたところで、悟は閃いた。
    「この前やったみたいに、オマエと、この飴一緒に舐めたいんだけど、ダメ? 」
     悟は小首を傾げて傑の顔を覗き込んで言った。

     この前というのは、先日、悟が任務から帰り、夜だったので寮の傑の部屋に直行した時のこと。
     悟がノックもせずに傑の部屋のドアを開けると、傑がちょうどチョコレートをひとつ口に入れたところだった。
    「あ、オマエなんか今、口に入れたな? 俺も欲しい」
    「もう口の中に入っちゃったしコレひとつしかないよ」
    「傑の口の中ので良いからちょうだい」
    「……君も引かないね。もう溶けちゃってるよ、ほら。諦めな」
     と、舌の上にのった溶けかけのチョコレートを煽るように見せてきた。なんかイラっとした悟は、傑に近づくとその後頭部を右手で少々強引に抱え込むようにして押さえると、傑の舌の上の溶けかけのチョコレートをれろっと舐めた。瞬時にチョコレートの甘い味が口の中に広がる。でも、物足りない。もっと食べたい。
     悟はもう一度チョコレートを味わうために、傑の口の中に舌を差し込む。とろりとチョコが溶けていく。
     チョコレートが溶けきっても傑の舌に甘い味が残っていたので舌を絡めたり吸ったりしてしばらくその甘さを味わった。
    「ん……美味かった」
     と悟が離れると傑は
    「……悟、今みたいなこと他の人にしてはいけないよ」
     と言った。
    「は? するわけねーだろ。人の口の中のもんなんて普通にキモいし、見るのも嫌だわ。……傑は、傑だけは全然大丈夫。むしろ美味かった」
    「……美味かった、じゃないよ悟。君のしたことは本来なら相手に殴られても文句は言えないよ? 私の心が広かったことに感謝しな」
    「は? 煽ったのオマエじゃん? 」
    「言いがかりはよしてくれないか。勝手に煽られたのはそっちだろ……やれやれ」
    「はぁ〜? 絶対オマエが煽っただろ〜?! 」
    そんなことがあってから、またあんな風に傑と一緒に食べたいなと思った。なんだかその方が美味しかった気すらした。どこかで聞いた「食事をするときは一人で食べるより好きな人と一緒に食べる方がずっと美味しい」というのは、こういうことかなと思った。

     だからまた、飴がひとつしかないなら、あんな風に舐めれば良いんじゃね? と思いついたのだ。きっと、その方が美味しい。
    「私は別にいらないし。そもそも悟のために買っておいた飴だから。君一人で食べな」
    それなのに傑はそんなことを言うから悟はムッとして、「ヤダ」と言った。
    「俺はオマエと一緒に食べたいの!! オマエと一緒に食べれないなら、俺もいらねぇー」
     ……ガキみたいなこと言ってるな、っていうのは悟は自分でもわかっていた。それでもこうして駄々っ子のように振る舞ってみせるのは、面倒見が良く同い年のクセにお兄さんぶりたがる傑に自分の主張を通したい時、この方法がかなり有効だと確信しているからだった。悟と傑は意見が合わないこともしばしばある。傑が絶対に譲らないだろうなぁ〜という時は悟が一旦引くこともよくあるが、今回は傑の方が折れてくれるだろうと見込んだ。
     だから傑がひとつため息をついて
    「……全く、仕方がないね」
     と言った時、悟は心の中でニンマリした。許容できる範囲のことなら、傑は駄々をこねる悟の言うことは、大体受け入れてくれるのだ。
    「じゃあほら、悟、ちょーだい」
     傑が「ちょーだい」と飴をもらうのを待つようにあーんと口をあけた。傑のピンク色の舌が見える。
     悟は椅子ごと傑の隣に移動すると、飴の袋を破り、傑の舌先にそっと飴をのせた。傑は悟の指までしゃぶるようにしながら飴を舌で受け取ると、口の中へ運ぶ。なんだかその一連の動作にドキッとしてしまった悟は、傑にしゃぶられた自分の指を無意識にペロリと舐めていた。
    「悟、ほら、どうぞ」
     傑が口を開けて舌の先にのった飴を悟に差し出すようにしてきたので、悟はサングラスを外すと、傑の舌ごと飴を舐める。
    「ん……あっま……」
    「悟、美味しい?」
    「うん、美味い。もっと欲しい……」
    悟は傑の口内のさらに奥に侵入するように自分の舌を差し込む。そうして傑の口の中の飴を二人で味わっていると、傑から「んぅ……」「ふぅ……」と吐息が漏れてきて、その声になんだかよくわからないが悟は興奮した。
     飴を舐めながら舌と舌が擦れるのが気持ち良くて、悟はもっともっとと求めるように舌を動かす。それに合わせて傑も舌を絡ませてくる。気づけばお互いこの行為に没頭していた。そうして段々と口の中の飴が小さくなり、カケラ程になって、もはや飴などない状態になっても、二人は互いの舌を絡ませていた。もう互いの舌と唾液を舐めしゃぶっているだけの状態になっても。
     やがて口の中の飴が完全になくなった時、悟は残念そうに言った。
    「あ、なんだよ、もうなくなっちったじゃん……もうちょっと傑と一緒に飴舐めたかった!」
    「そうだね」
     そう言う傑の唇は唾液に濡れて艶々と光っていて、なんだか美味しそうに見えて、悟は傑の唇をペロッと舐めた。美味しい。その後もう一度ペロッと舐めた後、今度は食べるみたいに傑のやわらかい唇をかぷっと口に含んで吸いついた。その後も傑の唇にチュッチュッと吸いついてみたりハムハムしてみたり舐めてみたりを繰り返してると、傑はフフッと笑った。
    「悟、やめて。くすぐったいよ。もう飴はないって。寮に戻る前にコンビニで飴も買おうか。部屋でまた一緒に食べようね?」
     傑は優しく諭すようにそう言うと、そっと悟の頭を撫でた。
    「……わかった。コンビニ行ったらいっぱい飴買うから。そんで部屋戻ったら今の続きまたすっから。……約束だからな」
    「はいはい」
    「でも、最後にもう一回……」
    そう言うと悟は再び傑の唇をちゅうと吸った。
    そこで、悟ははたと気づいた。
    「あれ?」
    「どうした、悟」
    「もしかしてこれってさー、キスってやつ? だったりする? 」
     たまに映画とか漫画で見る「キス」とかいうやつ。口と口を合わせて何が面白いんだ? 他人と口を合わせるなんてすっげー気持ちわりぃじゃん、オッッッエー!! と悟は思っていた。
     でも、飴を舐めるためではあったけど、傑と口を合わせるのは全然嫌じゃなかった。ずっとしていたいくらいに美味しくて気持ちが良かった。今、最後の一回って言ってしたはずなのに出来ればまたもう一度したくなってる。あれ、これがキス? 気持ちわりぃから一生そんなことやらねーと思ってたけど、傑とはできる?
     悟がそこまで考えを巡らせたところで、傑が大きくため息を吐いて言った。
    「いいかい、悟。キスというのは恋人同士がするものだよ」
    「バカにしてんの? 俺だってそれくらいわかるわ」
    「私たちは友達だろう? さっきのは……ただ一緒に飴を舐めただけじゃないか」
    友達だと言い切られて、なんだか悟は釈然とせずムッとする。いつもだったら傑がはっきりと「友達だ」なんて言ってくれたら凄く嬉しいのに。なんだかこれじゃあ友達の方が恋人よりも下のように思えてくる。恋人なんていたことも想像したこともないからわからないけど、友達と恋人はどっちが傑に最も近い存在になれる? 恋人の方が傑の一番になれる?
     そんなことを考えながら、ふと傑の顔を見ると心なしか顔が赤いのに気づいた。耳も真っ赤だ。
    「でも……私は……悟のことは普通の友達とは違って……もっと特別な友達だと思っている。"親友"って言うのかな……」
    「しん、ゆう……」
    「普通の友達以上に親しくて仲の良い特別な友達ってことだよ。……だからさっきみたいなこともできたというか……悟以外とはできないと思う。あんなことは、他の誰とも……」
    「傑」
     悟は傑を真っ直ぐと見つめてから静かに顔を近づけて、おでこ同士をくっつけた。
    「俺もオマエ以外とは今みたいなことできねぇし、オマエだけが特別だよ」
    「悟……」
    「で、親友ってさー、傑の一番になれんの? 」
    「え? 」
    「親友は、傑の一番?」
    「……親友だから一番というわけではないかな」
    「あ? 」
    「一番なのは、悟だからかな」
    「……それって……俺だから一番てコト? つまり俺が一番? 」
    「……いちいち言い直さないでくれないか? 」
     傑が悟を見て静かに微笑む。可愛いなと思った。凄く可愛いから誰にも見せたくない。独り占めしたい。この笑顔も、何もかも。傑の全てを俺だけのものにしたい、と悟は思った。可愛くて可愛くて仕方がないのだ、目の前の親友が。
     悟は吸い寄せられるようにまた傑の唇を吸っていた。
    「……さっきのが最後の一回じゃなかったの? 」
    「これは最後のオマケの一回。これからするのはオマケのオマケね。その次にするのがオマケのオマケのオマケ」
    「もう飴ないけど? 」
    「まだ傑の口に味残ってる」
    「……全く仕方がないね、君は」
     傑がハッと破顔して言ったその言葉を同意と受け取った悟は、再び傑の唇に己の唇をそっと合わせた。



    ***

    後日、すっかりひとつの飴を一緒に舐めるのが習慣化してしまった二人は、うっかり硝子と歌姫の前でもそれをやってしまい、歌姫にめちゃくちゃ怒られた。








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