風信サイド視界の端にサラリと揺れる艶やかな濡羽色。
それはいつだってアイツのものだった。
共に南方を守護する武神。玄真将軍、慕情。
それこそ何百年と、ただの人であった頃からそうだったし、いつも視界の端で揺れる黒は密かに美しいと思っていた。
いつからだっただろうか。
その黒にもう1人を探すようになったのは。
初めは、主人に随分とよく似た小神官を連れているな、と思った。それだけだった。
関係を持ったのは、所謂魔が刺したのだ。
見慣れた黒に良く似たそれに、触れたくなった。
ずっと触れてみたいと思っていたのかは、正直自分でもよく分からない。
一度触れてしまえばもう後はキリが無かった。
ふと、視界の端に揺れる黒髪に手を伸ばす。
触れる瞬間、その主が振り向く。
1885