監♀✕イデの導入部1.
イデア先輩とお付き合いを始めて、そろそろ一か月。まだ手を繋いだ記憶もなく、デートらしいデートもしていない。悲しいかな。マブ達に「お前ら本当に付き合ってんの?」って聞かれて「付き合ってるよ!」って堂々と胸を張って答えても信じてもらえなさそうである。
なぜって表面上は今までと何も関係性が変わってないからである。主に、イデア先輩とのやりとりはマジカメのダイレクトメール。付き合う前も後も、主な交流方法はマジカメでメッセージ。それは変わっていない。
嘆きの島での出来事やツノ太郎による夢の中でのいざこざで会話をしたことはあったが、それ以降はこれといって会話をした記憶はない。それ以前は、それ程関わりもなかったので、事件がなければイデア先輩と接点はなかった気がする。
事件を通して仲良くなったと思っていたのに、グリムをこっそり写真におさめようとしていたイデア先輩に声かけたら脱兎のごとく逃げられたのはちょっとだけ落ち込んだ。仲良くなったと思っていたのは私だけだったのかと。
イデア先輩から連絡が来てやり取りが始まった。毎日、ちょっとしたことでのやり取り。チャット、通話、本当に少しずつ少しずつ仲を深めた。
これはこれで良いのだが恋する女子としては、彼氏とのメールや通話で足りるかという話である。実際、同じ学校に通っているというのだからデートしたい。一緒に登下校は無理でも一緒に図書館でお勉強したり、放課後デートしたり一丁前に憧れてはいるのだ。
だからと云って一歩踏みせずにいる。かれこれ一週間くらい。話の切り出し方を悩んでまたいつもと変わらぬ他愛ない会話をしている。今日も今日とて今朝に撮ったグリムの寝坊写真を送ってみたのだが、秒速で返信が来た。
『ふぁっ!?本日のグリム氏も超絶にぐうかわなんだが!?』
グリムの写真に反応してくれるとは思っていたが返信が早すぎて笑ってしまった。笑っている間にまたポシュッと通知恩がしてメッセージが届く。それを皮切に鬼のようにメッセージが届き始める。
『拙者が可愛いと思っているのは監督生氏でして』
『可愛いは可愛いでもベクトルが違うと言いますか』
『誤解しないでくださらんか』
『これは浮気では決してなく』
『拙者が推しているのは監督生氏なのは変わりなく』
何も言っていないのにイデア先輩の言い訳と弁解が次々と届く。イデア先輩が慌てているのが目に浮かんでふふっと顔が緩んでしまう。グリムに対して妬くと思われているのもそうだけど、それより言葉の端々から私への好意を感じ取れて嬉しい。ストレートな物言いではないから分かりにくいのだけど、これは先輩なりの好意を言葉にしているのだと今なら分かる。だから、ちょっとだけ意地悪したくなってしまう。
『傷ついたので今度のお休み一緒にデートしてください』
傷ついたなんて嘘。意地悪とちょっとした勇気を込めて送信ボタンを押す。
イデア先輩、大好きです。