CALL 864全身を包む柔らかな光。
心地よい暖かさにぼんやりする意識の中、ゆっくりと瞼を開くとそこには先ほどまでの穏やかさからうって変わって慌ただしいスラムの喧騒が映し出される。
七番と書かれた看板。
とうに日が暮れているというのに目の前には長蛇の列。
皆健康とは言えず咳をする者や発熱でぐったりしている者も見受けられる。
「ケルタ!何してる?手を止めるな。」
忙しく働く先輩に声をかけられた青年はまだ虚ろな紫の瞳の目を擦り、銀色の短い頭を掻くと自分の服装を見る。
黒いワイシャツに白衣、スラックスに革靴。
首からは名札を下げている。
「研修中」の文字の下にはケルタ・モルビーの名が書かれている。
そういえば、とケルタは記憶を少し遡る。
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