リハビリ第一弾「うわぁん!聞いてよ、りっちゃん、ナナミン!」
食堂のテーブルで突っ伏しながら、びえーん!と泣いているのは、捜査一課の加賀美玲だ。
そんな加賀美を、りっちゃんこと有賀律……そして、ナナミンこと天狐七海は困った顔で見つめていた。
最近は一緒に捜査する機会も減ってしまったが、彼らは警察学校時代の同期である。
「うわぁ……加賀美の話長そうだから聞きたくねぇんだけどよ……」
「そんな!ナナミンひどい!こんなに泣いてる僕の話を聞かないなんて!」
「まぁまぁ、聞くだけ聞こう。んで、どうしたんだ?」
「聞いてくれるりっちゃん大好き♡」
さっきまで泣いてたのに、直ぐに笑顔になるのはある意味才能だよなぁと思いながら、二人は話を聞く体勢になった。
加賀美も真剣な表情になるものだから、二人も真剣な表情で加賀美を見る。
「この間……潜入捜査に参加したんだけど」
「おう」
「皆バニーの姿だったのに、僕だけウサギの着ぐるみだったんだよ……!」
「うん……?」
「僕だって!カッコイイバニーの姿が良かったのにぃ!着ぐるみなんて酷くない!?ねぇ、りっちゃんもナナミンもそう思うよね!?」
有賀は言われたことを理解するのに時間がかかっているのか、頭に?を浮かべていた。七海はというと、困惑した表情をしている。
暫く沈黙した状態が続いていたが、ここで七海が口を開いた。
「……帰っていいか?」
「どーーーーして!?慰めてくれてもいいじゃない!」
加賀美は七海の両肩を掴んで、ガクガクと揺さぶる。
「いやすまん……俺には荷が重すぎたたたた世界が揺れるるるる」
このままだと首が死んでしまう、と思った時に、ようやく理解した有賀が口を開いた。
「待ってくれ!一人だけ着ぐるみだった……ということは、それは加賀美だけ特別だった……という事じゃないか……!?」
「何言ってんだお前」
思わずツッコミをいれた七海。
ツッコミなんていれずに、この時点で席を外せばよかったのだが……。
「着ぐるみは顔が分からないからこそ、体全体での表現が必要になる。つまり、加賀美はそれが出来るからと思って、その能力を買われたんじゃないか?」
「僕の能力が買われたからこその……着ぐるみ……」
「そうだ、そうに違いない!」
「ぜってぇ違うと思う……」
そういえば有賀という男は、真面目すぎて変なところで天然を発揮するんだった。
頭を抱え始める七海に、更に二人は会話を続けていく。
「しかも、実際にその着ぐるみで仕事をやり遂げたんだろう?」
「もちろん!センパイたちと一緒に、事件も解決したからね!」
「最高じゃないか加賀美……!それも評価に入って、次に似たような事件があったときにもきっと呼ばれるな!」
「エヘへ、そうかな?そうだったら、また僕頑張っちゃう♡」
「その意気だ、加賀美!」
ワイワイと盛り上がってる二人をみて、フッと笑う七海。二人が楽しそうで良かったが、一つだけ言いたいことがあった。
「やっぱり、俺帰っていいか?」