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    summeralley

    @summeralley

    夏路です。
    飯Pなど書き散らかしてます。

    ひとまずここに上げて、修正など加えたら/パロは程よい文章量になったら最終的に支部に移すつもり。

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    summeralley

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    #飯P版深夜の真剣お絵描き字書き60分一本勝負
    お題【焚き火・笑顔】

    このお題、どうしてももう一本書きたくて自主的に1h計りました。死の描写があるので無理な人は避けてね!
    十ッパのあれは熱線的なもの?という解釈で書いてます。

    #飯P
    #二次創作BL
    secondaryCreationBl

    【飯P】最期の炎 燃え上がる炎が、山吹色と緋色の間を静かに行き来している。輪郭を変え続ける炎の姿は、あの荒野で毎晩見つめたものと同じだ。
     焚き火のための薪を集めるのは、いつもおれの役目だった。はじめは悟飯が自分で集めていたが、薪を集め、食べるものを集め、それから火を熾こし……と余計な時間がかかる。一秒でも多く鍛練に充てるべきだったあの荒野で、役割を分担するのが一番効率的だっただけのことだ。けれど、はじめて「薪を集めておいた」と告げた日、悟飯は想像よりずっと喜んだ。
     薪を組むのは、悟飯の方が上手かった。
     「お父さんの手伝いで、いつもやってたんです!」
     得意気に薪を重ねる悟飯の笑顔は、少しの誇らしさと、高揚と、子供らしい無邪気さに彩られていた。
     「ピッコロさんのお陰で、今日は早くご飯が食べられますね」
     枝に刺した魚を炙りながら、悟飯は明るく燥いだ。
     焚き火はおれたちに、その日の修業を無事に終えたという区切りを与えてくれた。口にこそしなかったが、炎は休息と安らぎの象徴だった。
     そのように炎に安息を感じていたのに、まさか灼かれて最期を迎えることになろうとは。最期の炎は、やわらかな焚き火の炎と違い、真っ白な熱線だったが……。
     悟飯が立ち竦んだそのとき、思考は生じなかった。殺意に満ちた熱気が眼前に迫る。悟飯の悲鳴が背後から聞こえたが、もはや逃れることは不可能だった。全身を斬りつけられ、隙間なく鞭打たれるような痛みと、烈しい眩しさに飲み込まれて視界すら歪む。熱気は数秒で去ったが、灼かれた身体はもはや姿勢を保っていられなかった。虚しく倒れた地面で、悟飯の泣きじゃくる声だけが、鮮明に聞こえた……。
     しかし、悟飯に現世へと呼び戻されてからは、炎は再び安らぎの象徴に変わった。
     おれが生まれた日を誰に聞いたのか、毎年ケーキにろうそくを立てて持ってくる。はじめの何年かは、悟飯自ら吹き消していた。一応、おれに吹き消すよう要求はするが、一度断るとすぐに「じゃあ、僕が代わりに消しますね」と笑うのだ。ある年、気まぐれで要求に応じて、ろうそくの火を吹き消した。あの時の悟飯の喜びよう……あんなに喜ぶならば、もっと早く応じるべきだった。
     やがて悟天やトランクスが生まれてよりは、やれキャンプだ、花火だ、ガーデンパーティーだと、何かにつけて呼び出された。少し離れて炎を眺めていると、悟飯は必ず隣へ掛けてきた。
     楠の木陰に設えられた、丸太をそのまま横たえたような長椅子に座っていたのは、悟飯がハイスクールに通い始めた年のキャンプだっただろうか。
     「はい、お水です」
     悟飯が隣に掛けて、紙コップを差し出してくる。悟天、トランクスにマーロン、子供たちが焚き火に何かをかざして騒いでいた。
     「あいつら、なにを焼いているんだ?」
    「マシュマロですよ、溶けて美味しいんです」
    「お前はいいのか?」
    「僕は……ピッコロさんと一緒に火を見たかったから」
     初秋のキャンプ場はまだ緑の匂いも濃く、土も湿り気を残している。涼やかな夜風が吹き抜けると、かすかな葉擦れの音がした。
     「こうして火を見てると、荒野のこと思い出します。毎晩、焚き火を囲んでたこと……ピッコロさんが、薪を集めてくれた時、嬉しかったなぁ」
    「ああ……あの時も喜んでいたな。夜、少しは楽になっただろう」
    「それもですけど……ピッコロさんがくれた薪を僕が組んで……毎日、二人で一つのものを作るって感じで、嬉しかったんです」
     そう言った悟飯の笑顔は、荒野で過ごした頃と、少しも変わらない屈託のなさだった。
     目の前の炎が一際燃え上がり、不意に追憶から引き戻される。
     あれから、何十年になるだろう。いま、炉の中に燃え盛る炎の山吹色は、子供たちがマシュマロを焼いていた焚き火にも、ケーキのろうそくにも、荒野の焚き火にも似ている。どれも悟飯と二人で眺めた、今も心の底をあたため続ける炎だ。
     静かにその場を離れ、おれは建物の外へ出た。
     火葬場の空は晴れ渡り、長く伸びた煙突から、やわらかな白い煙が静かに上っていく。魂そのものが、煙となって蒼天に溶けていくように。
     こんな時、本当ならば喪失感や寂寥に打ちのめされるのだろう。しかし、あいつは最期までおれを苦しめない。懐かしく優しい笑顔だけがまなうらに浮かんで、胸の裡に小さな焚き火を抱えているようだ。涙は一筋もなく、ただただ、長い年月の思い出だけが、穏やかに過っていった。
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    summeralley

    DONEネイPのみの番外、🍚ちゃんと出会う何年も前。

    完結済みの、マスター💅と客🍚がバーテンダー🅿️を取り合う連載。ンデちゃん含む全員の番外あるのでぼちぼち載せます。
    これは🅿️がバーテンダーなりたてで、カクテル練習する話。真面目だからバーテンダー修業も頑張ったはず🥹
    【飯PネイP】煙るバーカウンターにて/サイドカー 元々あまり酒を飲まないから、カクテルというものにこんなにも種類があることに驚いた。ネイルは「覚える必要はない、レシピを確認して作っても構わない」と言うが、よく出るカクテルは嫌でもレシピを覚えてしまう。サイドカーも、そうだ。
     ネイルの店へ立つようになって、四ヶ月経った。あいつは元々、この街へ出てきた時からずっとバーテンダーをやっていたが、おれはまったくの初心者だ。それでも、開店前にあれやこれやと教わって、一通りのことは出来るようになったつもりでいた。実際、これまで客から褒められこそすれ、苦言を呈されたことなどなかった。
     「このサイドカー……なんとなく、味が尖ってる気がする」
     そう言われたのは半月前だ。甘い、苦い、ぬるいなら分かるものの……尖っている? そもそもこの客が、ただの感想を言っているのか、文句のつもりで言っているのか、判別できなかった。なんと答えていいか分からないところに、ネイルが横合いから口を出す。
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