創作小説 振り返るとやけに影が長く伸びていて、手を振ってみればそれは同じように手を振りかえしてくれた。そうしてその手を収めてみると、同じように影もその手をぶらりと地面に向かって落とす。
ポケットの中に入っているスマートフォンを取り出して時間を確認してみれば、時刻はまだ十六時半であった。随分と日が短くなったものだと、頬を撫ぜる乾いた風にそんな感想を抱いていた。
遠くでスズメが甲高い声で鳴いている。その忙しなさは何かを訴えかけているようで、それから次いでカラスの鳴き声が聞こえてきたものだから、嗚呼、カラスにいじめられているのだと世間に知って欲しくてピィピィ声をあげているのだろうなと思って、くだらない思考だと一蹴した。
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