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    高間晴

    @hal483

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    高間晴

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    ぼんど800字。チェズモク。もうすぐ春ですね。

    ##BOND

    ■さくら、ふわり


     チェズレイとモクマは、作戦決行前にはいつも二人で散歩をする。裏通り、繁華街、公園。それは二人の上に空さえあればどこでも良かった。
     極東の小国でそこそこ上質なホテルに腰を落ち着け、敵アジトについての捜査も済んだ。だから今夜、敵地へと潜入することになっている。
     川べりの遊歩道。あたりは初春といった雰囲気で、明るい陽の光に梅が花をほころばせている。
    「梅は咲いたか桜はまだかいな、っと」
     隣でモクマがそう口に出すと、チェズレイは考え込んでいた様子から顔を上げた。
    「なんです、それ」
    「マイカの里に古くから伝わる唄さ。
     ――お前さん、ちょっと緊張してるね?」
     首を傾げてチェズレイの顔を覗き込めば、端正な顔が少し困ったように微笑んだ。
    「していないといえば嘘になります。今夜は私の夢への第一歩を踏み出すのですから」
    「まあ、考えるのはお前さんに任せておくよ。俺ブルーカラー、お前さんはホワイトカラー、ってね。
     でも、たまには俺も頼ってよ? バディなんだからさ」
     そう言ってモクマが笑うと、チェズレイは風にそよぐ長い髪を首筋に押さえつけながら小さなため息を付いた。
    「わかっていますよ。
     ねえ、モクマさん。そこで飲み物買って行きませんか」
     チェズレイが示すのは有名なコーヒーのチェーン店だった。張り出されたポスターには桜をイメージしたフラペチーノの写真が大きく載っている。
    「あ、これ美味そうだねえ――でも」
     店内や付近の道を見ても、桜色の飲み物を手にしているのは黄色い声ではしゃぐ年若い女性ばかりだった。
    「こんなおじさんが買ったら変な目で見られちゃうかしら」
    「大丈夫ですよ。私が二人分買ってきますから」
     そう言ってチェズレイは店に入り、数分後には二人分の飲み物を手に戻ってきた。
    「はい、どうぞ」
    「ありがとさん。――ん。思った通りに美味いねこれ」
     モクマが笑うと、チェズレイも同じくそれを口にする。一足早い春の味がした。
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