衣替え 僕と太宰さんが同居を始めて数年が経つ。
四月の末。最近日差しの強い暖かな気候が続くものだから、僕の提案で休日を利用して衣替えをしようという事になった。
「もうコートやセーターは要らないですよね」
「そうだね、仕舞っちゃおう」
太宰さんは、仕舞っちゃおう、とは云うものの動く気配がない。何時もの事だが、僕が全部やる羽目になりそうだ。
春夏物の衣類を引っ張り出し、反対に冬物を箪笥から出して押入れの方へ仕舞っていく。その後ろ、太宰さんは卓袱台の前で座布団に座って湯呑からお茶を飲んでいた。
入れ替えのために衣類を抱える度に思う。同じ洗濯洗剤を使っているのに、僕と太宰さんの服は少し違う匂いがする。それが不思議と少し嬉しい。
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