口は災いの元(前編)「んじゃ、後でなーみるく」
「うん」
「また明日〜!」
「うん、ばいばーい」
夕暮れに彩られた校門にて、私は姉妹と親友に手を振った。
いつもは同じ時間に同じ帰り道を通って帰宅するが、今日は、姉のいちごは運動部のヘルプ、親友のれい……れい達兄妹は、久しぶりに帰ってくる父親を迎えに行く日だ。
────どれだけ他の日が変わっても
どういう訳か、今日この日だけは……
(代わりにお父さんお母さんが早く帰るとかも起こらないんだよね……)
数えるだけでも疲れてしまう程重なった時間の中、“今日”だけは必ず、私が1人になる日だった。
しばらく帰路を辿り、住宅街に入ってから私は呟いた。
「明日の小テスト……それなりの点数にしないと……」
翌日に数学の抜き打ちテストをさせられる事を思い出す。本来の私の学力はそれなり……いや、どちらかと言えば中の下だった。周りに違和を与えないために、それをキープしなければならない。
授業に使われる小テストなんて、ほぼ全てが教科書から引用された定型文。全てのパターンを一度覚えてしまったら、もう計算ミス以外に間違えようが無い。
……今授業で習っている範囲ばかり完璧になっていく。教科に関係無く。
勉強は好きじゃない。全然好きじゃない。ただお母さんから怒られない成績ならそれでいいやって。楽に出来るならそれに超したことは無いって。そんなことを思っていた私にとって、とっくに理解出来ている範囲のテストは夢のようなもののはずだ。そのはずなのに。
(足踏みしてるだけじゃあ、なぁ……)
心の底からのため息を吐きながら、家の鍵をがちゃりと捻った。
うーんダメだ。1人になるとすぐにこう。今も頑張れている事をわざわざネガティブに考える必要なんてないのに。頭に覆いかぶさったモヤモヤを振り切ろうと、私は誰もいない自宅に「ただいま!」と大袈裟に挨拶をしながら入った。
「あ、そうだドーナツ!昨日のドーナツがまだ……食べちゃえ……! 」
私は靴を雑に脱ぎ捨てて真っ直ぐキッチンへ向かった。
昨晩、お父さんがドーナツを買って帰ってきた。1人何個ずつ、なんてことを何も考えていない、ただ美味しそうなやつがたくさん、種類順に詰められたあの箱。中を覗いてみると、ドーナツはまだまだ残っていた。鬱憤を晴らす手段を見つけた私はやった、と声を零しながら、好きな物に手を伸ばす。チョコのかかったクルーラーとオールドファッション。1番好きなチョコリングドーナツは昨日食べてしまったから、今日はこの2つをお皿に移した。考え事を辞めたい時はやっぱり美味しいおやつを食べるに限る。
鼻歌交じりに階段を登って、躊躇いなく自分の部屋へ入った。いちごと2人で1つの部屋な上、最近はれいもこの部屋に良く寝泊まりする。まだ居ない2人への「ただいま〜」をまたついつい口にしながら、鞄を放って勉強机にお皿をそっと置いた。その瞬間だった。
「おかえりー」
「うわあああああぁぁ!?」
絶対に居るはずのない誰かの返事が聞こえて、私は為す術なく飛び上がった。そして反射的に壁を背にしながら振り返る。
「あ……!?」
聞こえたのは男の人の声だった。何人か候補を浮かべながら声の主を見てみれば────一番最悪な男がそこにいた。
「よっ」
「っ……バロー、ル……」
バロールは今にも腰を抜かしそうになっていた私を可笑しそうに眺めていた。どうしてかいちごのものである椅子に、我が物顔で足を組みながら座っている。
前に会った時もこんな感じだった。私とれいが皆に別世界であった事を話していたら、いつの間にかすぐ横に居てまるで旧知の仲みたいに気さくに輪に入ってきた。それで皆で声を上げる。あの時もああしてニヤニヤしながら私達を見てたっけ。
「な、何で普通に出てきてくんないの!?てか何でうちにいるの!?不法侵入すぎるんだけど!」
「だってオレ法も不法もねーんだもん」
「もんじゃないよ気持ち悪いな!!」
「お、ソレ2つあんじゃん、1つくれよ」
「あ!あげないから!!」
私はバロールからドーナツを守るように前に出る。めいっぱいバロールを睨む私に反して、バロールは変わらず私を嘲笑っていた。
「そうカッカすんなよぉ、何かしようってワケじゃねぇ。ただお前に聞きたいことがあってな。お前が1人になるのを待ってたんだ。」
「聞きたいこと?前に散々答えたじゃん……」
「お前“ら”からはな。まだ“お前”には聞いてないことがある。」
そう言いながらバロールはゆっくり立ち上がり、私は息を飲んだ。
バロールの一挙手一投足に、どうしても身体が強ばる。こうやって普通に会話をしている最中でも、こいつは次の瞬間に何をするか分からない。どんなカードを持っているかも、それをいつ切るのかも。決して読み取ることが出来ない。……私はそれを良く知っている。
「何もしねぇって、こえーカオしちまって。」
「怖いはこっちの台詞だよ」
「…………。お前、一歩引いて慎重にしてるように見えて、案外そうやって思ったこと全部言うタイプだよな。」
「えっ……な、なに……?分析されるとかもっと怖い……」
より訝しげに見上げる私を見るバロールは静かに目を細める。それがどうも不気味に感じて冷や汗が滲み出た。
(そうだ、私に聞きたいこと、って言った?)
わざわざ私が1人になるのを待っていたとも言った。
そうまでして聞きたいことが……私に?
────心当たりは、正直ある。私ひとりが抱える秘密。
けれど、それを人前に出した覚えは無い。
こいつみたいな、バロールみたいな存在に感づかれでもしたらどんな介入をされるか。常に注意を払っていると言ってもいい。
街とか国とかの話じゃない。後からその規模になった訳でもない。始まったあの日からずっと、これは“世界”の問題だ。
だから、“あの事”は簡単に誰かに知られてはいけない。今のれい達にも……今は…………
(……いやいや、今はその辺は良いから……!)
明後日の方に向かおうとしていた思考を、首を横に振って呼び戻した。私は改めてバロールを睨み、「親が帰ってきたらややこしくなるんだから、早く質問して早く出てって!」と出来る限りの威嚇をした。威嚇をされたはずの本人は、尚も余裕の姿勢を崩さない。色が枯れてしまったような白い髪を揺らして、一歩だけ私へ近寄った。
「そう……お前みたいな人間は正直者だ。そういう奴は独り言が多い。さっきも誰も居ねぇのにボソボソ勝手に喋ってたしなぁ?」
「なっ……どっから聞いて……!」
「独り言が多い奴はそういうつもりがなくても心の声を声にしちまう。癖になってる分、ココがよく動くんだよ。そういうつもりがなくてもな。」
バロールは解説でもしているかのようにローペースで話しながら、自分の口元を指でトントン叩いた。一連の言動が何を意味しているのかが掴みきれなくて、私は黙ってバロールが続けるのを待った。
「分かんねぇか?なるほど、マジで“そういうつもりがなかった”んだな。あの時のお前は。」
「あの時?」
バロールはもう一歩足を進める。私は部屋の出口を横目に見て確認する。
「あの時だよ。オレがお前を初めて見た日。……お前にとってどうかは知らねぇが。」
「……は?」
バロールがまたもう一歩近付いてくる。私は部屋の窓も確認をした。窓だけなら、最悪割っても問題ない。
「嬢ちゃんの城をちょっと拝借したあの時……オレにはお前がこう言ってるように見えたんだよ。」
バロールはもう一度、自身の唇を指差した。そしてやたら大袈裟に口を開いて、言った。
「“────なんでこんなところに”。」
「──────あ」
す……と、体温が下がっていく感覚
直後に、熱暴走を起こしたみたいに早くなる鼓動
しまった。
しまった。しまった!しまったしまったしまったしまったしまった!!!
(口動いてた!!?うそ!?ああああっさっきの変な語りはそういう……!!ビックリし過ぎて声に出てたんだ!!!いや、だからってあんだけ離れてた人間に読唇術とか……い、いや……こいつ──!!)
そう、そうだ、あの日、あの時、こいつはフリージアの口の動きから意思を読み取っていた!!
うずくまって狭い空間に閉じこもってたフリージアの微かな唇を読んでいた!!ただ単に離れた場所に立っているだけであればもっともっと簡単だったんだ!!
自分が犯した致命的ミスに頭を打たれた気分だった。何が注意を払ってるだ。無意識とは言え口に出してどうする。
私は決して優秀ではない脳みそに鞭打って打開策を考える。今自分がどんな顔をしているのかは分からない。けれど多分、いや確実に、私が焦っていることが表情に出ているだろう。知らぬ存ぜぬは絶対通用しない。何でもいい。何でもいいから現状から抜け出す言い訳を。それっぽい嘘を!
(…………あーーっムリ、思いつかな……、ッ!?)
いつの間にか床まで下がりきっていた視線を上げる。
いつの間にか、バロールは私の目の前まで近付いていた。
驚いて後退るも、すぐに背後にあった私の勉強机にぶつかった。ここからどの方向に駆け出しても、きっとバロールの腕ひとつで易々と私を捕えられるだろう。
バロールの位置を意識外にやってしまったのはほんの1、2秒のはずだった。なのに。
「なぁ。お前は何者なんだ?いつ、どこで、オレを知った?」
バロールが最悪な男たる由縁。この僅かな隙を、決して見逃してはくれないところ。
その隙間の先に何かがあると確信した途端、隙間に手を突っ込んで引きずり出そうとするところ。
その何かが、誰かにとって大切であると確信した途端、どんな手を使ってでもえぐり出そうとする、こういうところ。
私は、こいつのこういうところが、心の底から────
(どう、どうしよう、何か……答えないと)
水分が頬を何度も伝う感覚がして、私は自分が冷や汗に塗れていることを自覚した。体が震えて思考回路も言うことを聞かない。沈黙が長ければ長いほど、目の前の堕天使に隙を与えることになるのに。これ以上の隙を与えて良い相手ではないのに。
「…………これ……こ……たえなきゃ……だめ……?」
動かない頭で絞り出したのはそんな言葉だった。これって腹に何か抱えてますって白状してしまったようなものでは。でも、もうバロールにどう伝わるかなんて気にする余裕はなかった。
「ああ、答えずらいってんなら答えやすくしてやってもいいぜ?確かさっき……親が帰って来るっつったな?」
「ッ!!やめて!!」
「ならどうすればいいと思う?」
「……〜〜〜〜〜〜っ!!」
最低すぎる脅しに私が大きい声で拒絶を示しても、バロールはにやけヅラで一蹴する。もがけばもがくだけ、ひとつひとつ丁寧に逃げ道が塞がれていく。
「その前にお前の片割れの方が先に帰ってくるだろ。別にオレはあっちでもいい。むしろ少しは抵抗出来るあっちのがいいな。……で?お前は?どっちがいいのかな?」
「このっ……!!」
バロールは自分の膝に手をついて、まるで幼い子に訊ねるみたいに煽る。力を使って見た目も中身も黒い顔面をぶん殴ってやりたくなった。拳が前に出る前に我慢をして、歯を食いしばりながら何とか理性を保つ。そんな私を見たバロールはケラケラと笑い声を上げた。
(だああああもう!!何が堕天使だ!!こんなの鬼だの悪魔だの言ったって足んないでしょ!!)
そう心の中で叫んで、ふと、頭をよぎった。
(…………堕天使……!)
私は、精一杯悔しがった様子を保ちながら俯く。これ以上私の顔からこいつに情報を与えないために。
そうだ。この男は堕天使。
そして、堕天使という存在はこの男だけじゃない!
(……賭けでしかない。下手したら余計に状況が悪くなって……また……)
……嫌な光景が瞼の裏に映って、少し気分が悪くなった。
怖くてたまらない。しかし、一時的だとしてもこの追い詰められた状態からは解放されるはず。忙しないままの心臓に息を切らしながら、私は勇気を掻き集めた。
「……白状すればいいんでしょ」
「する気になったか?」
「なった。だから……今日みたいなことは、これっきりにして。」
顔を上げ、真っ直ぐバロールの目を見てそう言った。バロールは初めて口角を下げ、ほんの少しだけ目を丸くした。意外だ、とでも言いたげな表情に見えた。
「あんたの好奇心ひとつで毎回こんなやり取りしたくない。それに、これは私にとって、割と大事な秘密だし……そっちがそんな脅しをかけるなら、こっちの話聞くくらい出来るはずだけど!」
震えのせいか思ったより大きな声が出てしまった。私が発する大声程度でバロールが私をどうこうするとは思っていないが、どうしても肝が冷えてしまう。
私からの交渉にバロールは一瞬だけ考え、すぐに憎たらしい顔に戻して応えた。
「いいぜ。お前にはこれっきりにしてやる。お前には。」
「…………」
私は隠すことなく眉をひそめた。わざわざ強調されなくても、どうせこんな感じに返されることは予想がついていた。
でも……これでいい。これでバロールは私から強制的に情報を出せなくなる。その事実の大きさに気が付いてないのか、まだ私に効果テキメンな手札があるのかは分からないけれど、こいつは大人しく納得してくれている。今は、これでなんとかなる。
私はバロールに見下ろされながら、大きく深呼吸をした。少しでも緊張を解す為に。バロールには余計な恐怖心を拭う為みたいに見えているだろうか。
これから嘘をつく緊張を解す為だとは、バレていないだろうか。
「シャムハザ」
「……あ?」
「シャムハザ、って……堕天使、知ってる?もしくはグリゴリ」
「誰から聞いた?」
バロールは食い気味にそう返した。ついさっきまでのふざけた声色ではなく、姿勢を低くして飛びかかってくる寸前の獣みたいな低音。一瞬でバロールの機嫌が変わったのが分かった。
反射的に跳ねた鼓動を、こっそりもう一度深呼吸をして抑える。
(だっ、大丈夫、落ち着け。この感じ、バロールはグリゴリを知ってる……!って事は……!)
グリゴリ達は慎重に隠れて暮らしている。自分達の身の安全に必要な存在にしか正体を明かさない。だからどうか他言無用で、と彼らは──彼は私達に深々とお辞儀をした。そんな集団だから、特別な力を持っているとは言え基本的には一般家庭の一般人な私の口から彼らの名が出てくるのは、バロールにとっては当然異常なはず。
大丈夫。驚きはしたけど、まだ想定内。
「ち、違う!直接会ったの、シャムハザに。私達の力に気付いて、向こうから会いに来て。そ、れで……初めて堕天使って存在を知ったから、他にどんなのが居るんだろうって気になって、前に、個人的に訊いてみた。」
「したら?」
「そ、そしたら……バロールみたいなのがいるよ、って……教えてもらった。」
「…………。」
「ここで……この世界で教えてもらった堕天使と、まさか別の世界で遭遇するとは思わないじゃん?だから、めちゃくちゃビックリした訳で……なんで、っていうのはそう言うこと。」
言い切ってから、自分の目線が斜め下の方に行ってる事に気が付いた。相手の目を見ながら言った方がやましい感じがしなくて良かったんじゃないか。マズイかもしれない。今更だと分かってはいたが、私はバロールの様子を伺ってみる。
バロールは……静かに私を見ていた。無表情で。
真意はやはり読めない。私が言った事を整理しているのか、私の所作からもっと情報を集めようとしているのか、それとも、嘘を吐いた私をどう責めようか考えているのか。
私は恐る恐る「白状、したけど」と声をかけた。するとバロールは、やや前のめりになっていた背筋を伸ばして、声を高々に漏らしながらため息を吐いた。
「そうかよ。つまんねーな。」
「つま……」
「シャムハザの野郎のことはオレも知ってる。むしろ知らねぇ堕天使は居ねぇよ。あんなバカみてぇに群れてる堕天使共はあいつらぐらいだからな。」
「……そうなんだ」
「は〜あ……もうちょいイイ答えが聞けると思ったのによ……」
「そんな変な期待しないでもらえる?!」
大袈裟に肩を落としたバロールを見て呆れ返ってしまった。勝手に期待して勝手にガッカリしないで欲しい。
(…………まだ安心すべきじゃないんだろうけど……ひとまず、乗り切った……?)
バロールはすっかりいつもの食えない感じに戻っている。こちらに照準を合わせていない、気まぐれなフラフラとした様子。私は声にも音にも出さないように、隠れて安堵の息を吐いた。
その間にバロールは窓の方へ行き、部屋の主である私に何も無いまま鍵を開ける。
「えっ!ちょ、なに!?」
「何って、帰る。用は済んだ。」
「あぁそう……」
また突拍子もないことをされると咄嗟に警戒したが、当然のように返されて力が抜ける。
これで嵐は去って行く。ミッションコンプリート、だけど……
私は僅かに残った懸念をバロールの背に投げかけた。
「さっき言ったこと、忘れたとか言わないでよ。」
「あ?あー、どれだ?」
「私に二度と詰問するなって」
「詰問とは人聞きが悪いなァ。だったらお前の方こそ忘れんなよ?」
「何を」
「オレに言ったこと全てを。」
「な……忘れないよ普通に。」
「そうか?まぁそうだよな?自分で言ったんだ。“都合が悪くなって忘れる”なんてこと、起こるワケがねぇよなぁ?」
「っ……」
今日だけで何度目になるか。バロールの言葉にまた脈を乱される。やっぱりコイツの前では安堵なんて出来やしない。……確信を持たれてるかは知れないけれど、私が本当に正直に話したかどうか、しっかり疑っているらしい。
バロールは顔を窓の外にやったままだ。もう私からは何も探れない。もう、なるようになるしかない。私は「だから!こっちがアンタにそう言ってんの!」と強気に返してみた。
「へぇ?なら、これからオレが誰の所で何をしようと、お前は困らねぇってんだな?」
「困らせるようなことしないんならね!」
「ハッ!違いねぇや。」
そこでようやく、バロールはこちらを振り返る。底の無い黒の中で光る赤色で、伺うように私を見る。私はその瞳をただ見つめ返した。
私の中で渦巻く拒絶と嫌悪を込めながら。
「……ふぅん?そんじゃ、好きにさせてもらうぜ。」
最後に「またな」と軽く続けたバロールは颯爽と窓から身を投げた。そして、バサリと大きな音を立てて飛び上がり、あっという間に夕暮れ空に消えていく。駆け寄って外を見てみれば、バロールが羽ばたかせた黒い羽が、ヒラヒラと地に舞い落ちていた。
バロールがこれから何をするのか。検討はついてる。
私は床に放った学校用の鞄からスマホを取り出し、いつも使っているメッセージアプリを起動させた。
後は“彼”の行動次第。だからこれは、正真正銘の賭け。だけれど……
「────そう何回もやられっぱなしだと思うな……!」
これで、ほんの少しでも一矢報いることが出来たら──!
私は液晶に映る送信ボタンを押すと共に部屋から駆け出し、家の外へと飛び出した。