口は災いの元(後編)私が少しだけ意識をして足を踏み鳴らすと、足元の鉄骨はカツンカツンと小気味良い音を奏でる。
建設途中のビルの一番上。数ある私の散歩コースのひとつにさせて貰っている場所だった。
冷たく吹く風が心地よく、意外と目立たない。人間達は高いところから話しかけられる機会が無いからか、あまり空を見上げない。何より今は日が落ちている。見上げられたとしても、もう少し低いところを眺めるだろう。静かでとても良い場所だ。
話し相手が欲しいところだけれど、残念ながらあまり贅沢は言っていられない。
(今夜辺りに、また皆のところに戻ろうかな。)
折角だから何か手土産を持ち帰りたいのだが、何がいいだろうか。そう心の中で独り言ちる私の元へ、誰かが大きく翼をはためかせる音が近付く。
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