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    Ari

    @Ariyorinoari356

    体不ネタが大好きな人。
    不謹慎です。とてもとても…
    cpなどぐちゃぐちゃです。
    🧡中心に弱らせます、cp右おおめ。
    💜🧡あります‼️ご注意を

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    Ari

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    🧡と💜が“散歩”をする話。過去に書いたやつです。
    「主語をなくし、できるだけ人名を使わない」という縛りの元書きましたのでぐちゃぐちゃです、と言うわけで供養。

    あるびびこつ、こつ、かつん。革靴がコンクリートとぶつかる音。

    「何方へ?」

     扉の先の暗闇から聞きつけた蒼い瞳がのぞいた。まるで、飼い主においていかれる飼い猫のような。
     
    「まぁまぁまぁ」
    「濁さないでください。僕もお供します。貴方だけでは危ない」
    「大丈夫大丈夫、ちょっとその辺散歩してくるだけだって」
    「…その衣裳で、お散歩、ですか」
    「ははは。まぁまぁまぁ」
    「貴方という人は…全く、自分の立場を把握して頂かないと困ります」
    「十二分に把握してるつもりだよ、大丈夫」
     笑って黒髪の男はピースをした。
    「…帰りにケーキを買いましょう。三分ほど待ってください」
    「お、やりぃ。ゼリーもつけてよ」
    「全くもう…大人しくそこで待っていてくださいね」
    「ははは、悪いね」

     呼び止められた大人と呼ぶにはまだ若すぎる青年は、紫色の瞳をきらりとのぞかせて何かを試行し始めた。
     彼の眼には一体何が映っているのだろう。
     それは、周りにいる仲間たちにもわからない。


     ざっ、じゃり、じゃりっ、と地面を擦れる音が響く。
    「別に付いてこなくたってよかったのに」
    「心配なんですよ、悪いですか?」
    「べつにー」



     彼らにとって夜道は住処だ。日中せっせこと働いている凡人どもには当然わかるはずもない日々を、彼らは日常と呼ぶ。いい塩梅に夜をかすみ雲が包んで、冬の乾燥した空気に子の星がきらりと光った。じゃら、じゃらりと金属がすれる音と地面を歩く音がただ響くばかりの道は、彼らが肩を並べるには十分な広さであった。

     ぴり。

    「…ボス、下がって」
    「早いなぁ。まだ外に出て10分も経ってないのに」
     散歩まだ始まったばっかだよ?とふてくされたように吐き捨てる。
     …にやりと眼光を光らせながら。
    「やっぱり付いてきてよかったでしょう?」
    「別に俺だけでも掃除できるし。俺の大事な情報屋が傷つくだろ」
    「ふふふ、理由がとってもセクシーですねぇ」
     でも、お気持ちだけで結構ですと笑って軽く咳払いをした。 
    刹那、ざしゅんっ、と勢いのある音が鳴って四方から何人もの不成者たちが出てきた。
    「それじゃあお手並み拝見~」
    怒号か何かよくわからない、日本語かどうかも疑う言葉。
    瞬時に黒髪の男は目の色を変えて、舌打ちをした。
    「…チッ、薬漬けかよ」
     趣味わりぃ、と吐き捨てて、また紫色の瞳をぎらつかせた。
    「全く、坊やたち。おうちに帰りなさい」


    「…躾が成っていませんねえ」

     
     ふっ、と軽く息を吐いて足払いをしたかと思うと、バタバタと勢いよく人がなぎ倒されていく。流石の早業である。

    「これじゃあ聞けるもんも聞けないなぁ。どっから来たんだお前たち」
     しゃがみこんでぺちん、となぎ倒された一人にデコピンを浴びせて聞く。
    「……あぁ、そっかそっか」
     うめき声と必死の抵抗が間もなく瞳に映ったであろう、そう呟いて男は続けた。
    「いいか〜お前たち。オクスリは用法容量を守るんだぞ」
     常識常識。そういって懐から何かを引き出し立ち上がり、軽く蹴り上げた後ふぅ、と息をついた。

    「全く、やっぱり貴方がわざわざ赴く必要なんてないのですよ。理解さんや僕、依央利さんに頼めばよかったじゃないですか。何のための右腕と情報屋、掃除屋ですか?」
    「えーだって右腕は動きすぎるしうるさいしいなくなったら困るし。情報屋だって勇逸無二だからなー。いなくなると俺また倒れちゃうかもー。あと本人の前で掃除屋って言うなよ?奴隷って訂正されていろいろと面倒だから。…それに」
     怪我されても困るしね、怪我してない?と飼い猫に向かって微笑む。
    「なんで僕が怪我する前提なんですか!もう、ボスったら」
     大人を見くびっちゃいけませんよ。そう言って、半分前髪に隠れた額をぱちん、とはじいた。
    「っった」
    「ほら、行きますよ。長居すると面倒です」
    「……まぁそうだね」
    「ふふ、そんなセクシーなお顔しないでください。僕イっちゃいます」
    「変態」
    「どうもありがとう」
    「はぁ…」



    その後も他愛のない会話をはさみながら、二人は「散歩」を続けた。しばらく歩いていると、街灯が増えて、人通りも増えてきた。
     ぱたり、足を止めた先には一つの小屋。小窓からオレンジ色のまばゆい光が外に漏れ出ている。
    「…やっぱり散歩なんて嘘じゃないですか」
    「まぁまぁまぁ。ちょっとした話し合いだよ」
    「全くもう…」
    「静かにしててね、俺は俺の役目を果たすからさ」
    「……わかりました」
     そういって男は扉をノックした。
     物の数秒で扉が開いて、黒い世界が眩い人口の暖色で明るくなる。

    「お待ちしておりました、イトウ様」
    「形式とかいいから、とっとと終わらせようよ。俺帰りにケーキ買ってもらうんだから」

     男は重厚感のある黒い椅子に座らされ、紅茶の香りを嗅いだ。ピーチの良い香りだ。
     ぬるい。
     それだけ感じ取って瞳だけで後ろの男に指示を出し、紅茶のカップを机に置いた。
    「ボディーガードとは、私たちも警戒されたものですね」
    「俺は別に連れてくるつもりなんてなかったからね」
     こいつが勝手についてきたんだ、と呆れたように男は言った。
    「…それと、さっきは挨拶どーも。お前たちの中がよーく知れたよ」
    そう言って男は懐から彼の右腕が丁寧にまとめたであろう書類を取り出して、机に叩きつけた。それから頬杖をついて、低い声で続ける。

    「お生憎様、俺はそういう主従関係が嫌いでね。うちの前向きで自発的な奴隷みたいに自分から望んでるならいいけど、この型のクスリは絶対に違うからねー」
     そう言って、先ほど抜き取ったであろうクスリの入った小さな薬包紙を、相手方に投げつけた。

    「交渉は決裂。俺は仲間も今のアジトも壊したくないからね」
     大事なんだ、とけらけら笑った。
    「…そうですか。それは残念」
    「喧嘩売ってきたのはそっちだろ。嗤わせる」
    「そのニヤけ顔がいつまで続くか楽しみですよ」

     じゃきん、と紫色の瞳の光るこめかみに銃が突き付けられた。正面からも。四方八方、殺意だらけの空間である。
    「へぇ、そんな鉛物で俺に勝てるとでも思ってるんだ。奢ってるね」
    「違いますよ。アンタが大事なのは仲間でしょう」
     バンッ、と発砲音が鳴った。正面からでも、横からでもない。
     後ろから。

    「奢ってるって言ったでしょ」
     しゅっ、と服のすれる音が聞こえた。そのあとすぐに、バンッとたたきつけられる音、ぐぎゃ、と小さくうめく声が後ろから聞こえた。振り向かずとも、音から、空気から、相手方の表情から、後ろがどうなっているか容易に想像できる。
     「…っ!!」
     じゃきん、とこちらに銃口を向けて、打とうとする。
    「なに?打たないの?」
     どうしたの。目的は目の前に座ってるんだよ。そう、淡々と言い詰める。
    「…いつ」
    「んー?もっと大きな声で言って」

    「…いつ、コレから弾を抜き取った」

    「あっはは、何時だろうね。マジック?」
    「ボス。遊んでないでください」
     後ろで鎮圧を終えた男が呆れた声で言った。
    「さぁーて、どうしようかな。俺、薬は嫌いじゃないけどこういう使い方をする奴は嫌いなんだ」
     もっと楽しいことに使いなよ。ADMAをセフレに飲ますとかさ。男は飄々とした口調で続ける。
    「……笑わせる」
    「笑う暇があるんだ、この期に及んで」
     座ったまま、派手な音を立てて机を蹴り上げた。
     ぱしゅん、
    「行儀悪いって怒られちゃうなぁ」
     どさっ、と倒れ込んだ頭の上に足をかけて、手に握っていた全六発の弾をぱらぱらと落とした。
    「桃の花言葉知ってる?」
    「……ぐ……」
    「天下無双」
    「……っは、お似合い、だぞ、イトウ」
    「どーも」
    「もう一度、言う、ぞ」
    「は?」
    「アンタは、仲間が大事なんだろ」
     バリン、と派手な音を立てて、窓が割れる。外の空気がヒュウっと入り込んできた。
     と、同時。
    「……?!」
     ガクン、と脚を掬われた。力が入らなくなる。
    「……ハハハ、アンタの嫌いなクスリだよ」
     そう言って、男のジャケット、左方を撃ち抜いた。いつの間に弾を込めたのだろう。
     
    「……っアマヒコ!!」
    「仲間の心配をするのですか。随分と優しい長だ」
     そう言ってガッ、と首を掴み、軽々と持ち上げた。
    「今からでも良いですよ、条件を飲んでくだされば。私たちは寛容なので」
    「……っは、飲むわけねーだろ。俺の仲間はここじゃなきゃ、俺の元じゃなきゃ。何処にもないんだよ」
    「っふふふ、あっははははは!!そうですね、アナタも含めてどいつもこいつも頭の足りていない人たちばかりだ!!」
     ずんっ、と腑に一発、拳が飛ぶ。
    「っかは、っ……」
     そのまま小柄な青年の体は後方に吹っ飛んだ。
    「穢らわしい、愚者どもめ」
    「……そうですね、愚か者はどちらでしょうか」
     じゃきっ、ばんっ。
     一発、発砲音。
    「……っげほ、っ」
    「すみません、ボス。大丈夫ですか?申し訳ありません、少々人数が多く手こずりまして……」
     あわあわしながらにこりと笑顔を貼り付けて、まるで幼児と会話するように腰を低くする。それを不機嫌そうに黒髪から覗く瞳が貫いた。
    「……」
    「……帰りにアイスもつけます」
     やれやれ、といった形で言うと、
    「よしきた」
     ボスは食い気味にニンマリと笑った。
    「全く貴方という人は…」
    「何終わった気で……!!!」
     財力と薬の力いうのは陳腐だが強く、いつ呼び寄せたのか入り口まで黒いスーツの人影がずらりと並んでいた。
    「……アマヒコ、手ぇ、貸して」
    「ダメですよボス、もう貴方の手を煩わせるわけには……」
    「いいよ、俺がやりたいんだ」
     そう、部下の前でにっこりと笑って見せた。
    「…わかりました」
     やれやれと言わんばかりにこちらも笑って見せて、青年は男の手を借りて立ち上がり、脚に一括入れた。幸い、不意打ちの効果に驚いただけで薬にはそこそこ耐性がある。
    「さ、アマヒコ、いける?」
    「問題ないです、ボス」
    「よし、ケーキ食べて帰るんだからね」
    「はいはい」
    「はいは一回」
    「ふふ」
    「…んだよ、まったく」
     しゅっ、と音がして、二人分の影が一気に動いた。息はぴったり。どんどんと人が減っていく。
    どさ、どさっ。
    「大丈夫ですよ、殺しはしない」
    「まぁしばらく起きないだろうけどね」
     
    「…っひ…」
    「まぁ、改めて言うけど交渉は決裂。この辺の土地の権利が欲しかったんだろうけど、渡せないよ。ごめんね」
     金持ちの思考はよくわからないな、と青年は続ける。
    「…い、命だけは、っ、金なら、あるっ」
    「はは、B級映画じゃないんだから。金は欲しいけど有り余ってるし変にもらったり使ったりするとまーた怒られちゃうからね。あの大声で散々言われた後しばらくおやつなしになるんだ。それはもう御免だからさ」
    「わ、悪かった、だからどうか…」
    「言ったでしょ?殺しはしない」
     でもとっておきをくれてやるよ。

    「アマヒコ、あと任せた。俺外で待ってるから好きにしていいよ。早く終わらせてね」

     そう言うと青い瞳の男は顔をキラキラさせて、元気よく。
    「わかりました!ボス」
     にっこりと笑って応えた。


    「さぁーて。ボスを待たせるわけにはいきませんが、僕の大事なボスを蹴ったのも事実。少々、お覚悟をしていただくとしますか」
     ざっと、二か月くらいは覚悟をしてもらいますよ。
     そう、今世紀最大の笑みを掲げて言った。




    ふぁ、と大きなあくびをしながら待つこと数分。
    「ボス、お待たせしました」
     にへらとわらって紫色の髪を靡かせ、男が建物から出てきた。
    「……ま、前よりは早くなったね、及第点」
    「ふふ、全然収まっていませんが」
    「怖いって」
    「ボス、あとで傷見せてくださいね」
    「え、やだ」
    「やだじゃないです」
    「えー」
    「さ、行きましょう」
    「それがさ」
    「?」
    「脚が動かないんだよね」
    「っぇ?」
    「さっきのクスリなのかわかんないけどさ、ここに座ったらそのまま動かなくなっちゃって」
    「~~~~っもう!!!早く言ってくださいそういうのは!!」
    「はは、悪いね」
     おんぶしてくれない?とねだる自身のボスに呆れつつ彼らしいなと思って、
    「…しょうがないですね」
     と笑った。


    「やっぱり僕付いてきて正解だったじゃないですか」
    「う~ん、否めない結果になっちゃったな」
    「次からはちゃんと護衛つけてくださいね」
     アマヒコとの約束です、と釘を刺していった。
    「…わかった」
     しぶしぶボスはうなずくと、ちょっと寝る、と短く言って、数分後には小さな寝息を立て始めた。

    「ふふ、本当にかわいい僕のボス」

     紫色の髪を靡かせ、かずみ雲の下を一人分の足音を立てながら帰った。


     …ちなみに、この後ボスは誰かさんに結局こっぴどく叱られ、もう二度と一人で出歩けなくなってしまったのはまた、別の機会に。
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