どうしようもない話荒野の夜空を独り仰向けになって眺める。
人工的な光のない場所で夜空に輝く星は明るい。
チャリ、と小さく音を立て身じろいだ弾みで流れたチェーンとドッグタグが首筋に当たる。
時々思う。
なぜ仲間が死んだのだろうと
なのになぜ自分が生きてるのだろうかと
なぜ一緒に死ねなかったのだろうと
なぜ
今も死なずにここに居座っているのだろうと
ふわりと髪を揺らす風は冷たい。
澄んだ夜空は自分には眩しい。
もっと薄暗く汚れたごみ溜め場のような所にいるべき人間なのにどうしてここに居るのだろう。
死に焦がれている筈なのにその一歩がいつまで立っても踏み出せない。
そっと己の首に手を当てる。
ぐっと力を入れて気道を締め付け強制的に空気を遮断する。
身体が酸素を求めて苦痛を押し付けてくる。
緩まりそうな手に力を入れる。
はく、と無意識に空気を求めて口が動く。
ぼやけだした視界にああ、本当に馬鹿だなと笑えてしまう。
こんなやり方では死ねない。
分かっているのにやってしまうのは自分への慰めだろう。
どうせ力が入らなくなる手を叱咤して首に押し付ける。
手足が痺れてきた。本当にこのまま死ねればいいな、なんて虚になり始めた思考で考えていれば突然強い力で手を引き剥がされる。
自然と開いた気道に求めていた酸素が入り込み身体が大急ぎで取り込もうと躍起になる。
その弾みでヒュッと無理に吸い込んだ喉が耐えきれずゴホッと大きく咳き込む。
数度それを繰り返し生理的に溢れて滲んだ視界をきょろりと動かせば夜空の星よりももっと眩しい光が二つこちらに向けられていた。
「お前、いい加減にしろよ」
静かな声で言われたそれにふは、と思わず笑いが漏れる。
この行為の意味、自分への慰め。
それともう一つ。
「アンタが止めてくれるんだからいいでしょ」
にこりと笑ってやれば器用に歪められた二つの光にどろりと心が満たされる。
どうしようもなく愚かで浅はかで欲深い。
優しいアンタはこんな茶番にも付き合ってくれる。
こんな自分でも求められていると錯覚してしまう。
本当に、なぜ自分の様な人間が生き残ったのか
現実は無常で、理不尽で、不必要なものばかり残していく。
ああ、本当に救いが無くて笑えてしまう。