酒を煽る。
煽った後に、もう一杯。
「……もうよせ」
「あ」
更に次を注いでいると、杯を持った手ごと掴まれ上の方へ連れて行かれた。
頭上にある男の口へ酒が消える。
その様子を見ていると普段通りの険しい目に見降ろされる。
「なんだ、飲みたかったのかぁ? なら言えよなー」
胡坐を座椅子にされる男はケラケラ笑うも黙ったまま。
やがて、おもむろにくつろげたままの襟元を広げて肩に噛みついてきた。
「いぃっ⁉」
心地良いほろ酔いが痛みで吹き飛んだ。
反射で裏拳が飛ぶもさっと防がれ、身をよじることもできず痛みに耐えるしかない。
本当に何なんだ一体!
強制的に醒めた頭で考えるも唐突すぎてわけがわからない。
男は墨肌をぎりぎりと噛み、歯形がしっかりと残ったところで満足したらしく口を離す。
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