涼しくて暑いバス車内に降りる停留所の名前が響くと、蒿里は軽く肩を揺さぶられた。
いつの間に寝てしまったのだろう。
頭がぼんやりとしている耳元で正頼がもうすぐ着きますよ、と優しく囁いた。
バスから降りると夕方に差し掛かる時間の日差しは強く、思わず目を細める。
柔らかく吹く生ぬるい風と蝉の声。
まだスッキリと目覚めていない体は少し重い。
蒿里が驍宗と住んでいるマンションまでの数分の距離が長く感じる。
「暑いね」
「クーラーの効いたバスの中とは雲泥の差ですね」
「驍宗さん達、帰って来たかなぁ」
数日前、3人でドライブに行こうという話が上がったが、蒿里は正頼と動物園に行きたいからと断った。
驍宗と李斎は知り合う以前から大型バイクのツーリングを趣味とし、バイクの性能、走りたい場所の話など、ビール片手に楽しそうに語り合っているのを、蒿里は知っている。
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