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    roconnnnn

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    メと◓が一緒の雲に乗ってふわふわしてるのを書きたかったのですがそこにたどり着くまで時間がいるのでひとまずはワンライで書いた明るくないモノローグ編のみの投稿でご容赦ください( ; ; )
    ※メの子供時代、家族を捏造しています
    ※👮🏻🏫組について完全に勘違いして書いてしまったところがあり、書き直せないところまで来てしまったので気づいた方は目をつぶっていただけると助かります。大変申し訳ありません。

    ふわふわ 夢を見ている。
     小さなころからずっと見ている夢だ。その夢の中で俺は、ふわふわな雲の上に乗ってぼうっとしている。
     ふわふわ、雲の中でその感触を楽しみながら、周囲を見てみると今回も隣の雲に赤井が乗っている。それ以外には何も無い。上も下も、右も左も、ただ青空が広がっているのみでそこにあるのは自分たち二人だけいる虚無だった。
     小さい頃は、俺の乗っている雲の中に両親がいた。近くの雲には友達もいた。ちなみに雲は基本一人乗りらしく、友達が俺の雲に乗ってきたり、俺が友達の雲に乗るようなことはなかった。雲に乗っているときの体勢については、仰向けとかうつ伏せとか、あぐら座りとか……楽な姿勢をすることが多い。立っていることはあまりない。それはさておき、初めて見た夢で俺は両親がいる雲を指してあそこに行きたいと願ったのだ。だから両親の元で俺は生まれ育てられたのだと思う。両親が亡くなると、夢の中でも両親が消え、一人乗りの雲になってしまった。友達も離れると、夢の中でもどこかに行ってしまった。
     やがて警察学校に入ると、仲間ができて夢の中でも近くに来てくれた。ふわふわな雲に乗って、ふわふわ〜と彷徨うみたいに俺の周りでたわむれる。会話は特になかった。本当に、とにかく、ふわふわな雲に乗ってぼうっとしているだけの、夢だったのだ。
     あるとき夢の中で警察学校時代の友人が一人消えた。不審に思って確認して、亡くなったと知った。それに続くかのように一人、また一人、消えていった。それぞれバラバラになっても夢の中では離れないでいてくれたあいつらが。心の中では繋がっていたのだろう。それが命とともに途絶えた。かなしくて、やるせなくて、それでも夢の中でだんだん浄化して、残ったのはさみしいという気持ちだった。前を向かないとやってられない現実の中で、この気持ちだけは忘れないでおきたくて。…いや、忘れられなかっただけかもしれない。
     残った俺と幼馴染である親友の二人でぷかぷかと雲の中に乗って揺らいでいた。
     ふわふわ。ぷかぷか。
     夢の中だと何にも考えずにいられる。現実に起きているようなことは何にもない。ゆっくりと心と体を休める優雅な空間であった。
     夢は、体力的にも精神的にもキツい日常から逃避できるひとつの手段だった。夢の中で心を浄化することができたからここまで挫けずに、目の前のことに真っ直ぐ向き合うことができたに違いない。
     けれど、あの日。親友が死んだ日。
     やることなすことで精一杯で、気がついたら朝日の光に包まれていた。ヘトヘトになりながら帰宅し、ベッドにダイブして目を瞑った。
     夢の中でも、親友はいなかった。これまでそうだったからと分かっているつもりだったけれど、幼馴染の親友という存在は自分が思っているよりもずっと大きく、重く、自分の心の支えになっていたのだと思い知る。
     助けられたはずの親友の命。そう思うとくやしくて、やるせなくて。どうしようもない。
     かなしい。つらい。くるしい。
     なぜヒロが死ななければならなかった?
     なぜライ​は、そこにいた?
     夢の中でふわふわの雲に包まれていても、そんなことばかり考えてしまう。心做しか空の青さも、雲の白さも、くすみがかかっているように見える。溜息を吐いて周囲を見渡すと、靄がかかったものが近づいてくる。思わず凝視すると、その靄はだんだん薄れて、雲に乗っている人の姿があらわれた。
    (……ッ!? ライ!?)
     なんとその雲にはライが乗っていた。
    (なんで!?  なんでお前が来る!?)
     これまで組織の人間が夢の中で登場したことはなかった、というのもあって夢の中でのライの登場は衝撃的だった。
     ライは、俺の近くまで来て止まった。
     なぜ俺のところに来た?
     混乱する頭はそんなことしか考えられなかった。
     ライは、俺の顔を覗き見るみたいにして俺と目を合わせようとしてきた。
     ヒロを殺したやつが、なぜ?

     その後のことは、覚えていない。気づいたら目覚めていた。
     それから毎日夢の中でライはいつもそばにいた。
     仕事でライと組むこともあった。ライは、いつもと変わらない態度で仕事に取り組んでいた。ヒロのことをなんとも思っていないようで、憎しみが胸のうちで募っていくのを感じる。夢の中で浄化したくても、そばにライがいるのでそんなこともできなかった。夢のせいで憎しみの感情が強まっていく一方だった。けれど、俺にはすべき仕事があり、守るものがあった。自分の感情のせいでそれが滞るようなことがあってはならなかった。そのため仕事に打ち込み、感情と切り分けられるように努力した。……まあ、ライと対面するとどうしても憎しみが溢れ出してしまうのは大目に見て頂きたい。ライは組織の人間だからNOCがいるとなれば早急に対応せねばならなかったのも理解はできるが、自分の手を汚さないようヒロに自殺させた上に俺が殺したなどと言うスナイパーのくせに卑劣極まりないヤツだったので。あそこに、ヒロがいるところに俺が一番に着けなかった、という後悔はどうしたってつきまとう。けれど、ライはなぜあのとき俺よりも早くあそこにいた? よりによって、凄腕スナイパーが。最終的にたどり着くのはそこだった。ライへの憎しみは浄化されることはないだろう。
     
     ヒロの死から二年が経った頃、ライが組織から消えた。──組織にライがNOCだとバレたのだ。
     諸星大という偽名で組織に入り、ライというコードネームを与えられたその男の正体はFBIの捜査官、赤井秀一であった。
     赤井はヒロと違い組織にNOCだと知られ逃げ出して生還を果たした。
     その日も夢の中で赤井はそばにいた。
     (同じ立場のくせになぜ……)
     そう思うと、怒りが収まらなかった。組織を潰すという同じ目的をもつ同志なのに、その同志を、赤井は殺したのだ。共にした仕事で、赤井がデキる男なのは嫌というほど知っている。そんな男ならば、ヒロを助けることもできたはずで、なのにヒロは死んだ。
     許せなかった。
     到底許すことなどできなかった。
     自殺したヒロの無念や苦しみを、一番に着けなかった悔しさや恨みを、思い知らせてやりたいと、思った。
     (許さない……殺したい…… 赤井秀一を絶対に殺してやる……!)
     隣の雲にいる赤井は、ずっとこちらを見つめている。これはいつものことでストレスが溜まらないように俺はいつも目を逸らしていたけれど、この日は怒りの感情でいっぱいになって、赤井を見つめ返してやった。
     (それにしても、……夢の中の赤井ってなんであんなに心配そうに俺のことを見るんだ……? 赤井に、そんな資格はないくせに……殺してやる)
     そんなことを思いながら、目覚めた。最悪の目覚めだった。
     そんなこんなで夢の中はいつも赤井がそばにいた。思えば現実の方でも組織の中で赤井と会ってないことの方が多かったのに、夢の中でだけは、いつもそばにいる。不気味だった。殺してやりたい。絶対殺す。そんな思いを抱えて赤井を殺す機会を伺いながら仕事をこなしてきた。伺うといってもFBIの動向を確認するのは骨が折れるほど大変だった。FBIのやつらが秘密裏に動いているからだ。米国にも危機感を抱かれているほどのクソッタレな組織ということだ。

     その組織に、赤井秀一が殺されたらしい。
     警視庁に来ていたFBIが泣いていたと聞いた。実感は全くなかった。俺の知らないところでくたばったのか、と他人事のように思った。俺が殺すはずだった男は、他人に殺されてしまった。組織が赤井のことを恐れているという話は聞いたことはあったけれど想像以上だったようだ。ああ、なんにも、ぜんぶ、うまくいかない人生だなと自嘲気味に笑った。

     夢を見た。
     隣の雲に赤井は、いた。
     (なんで……!?)
     死んだんじゃなかったのかお前。死んだはずの赤井が夢の中にはいる。これまでそんなことはなかった。
     赤井は変わらず俺のことを心配するみたいに困った顔をしている。
     ああ、いつもこれだ。夢の中の赤井はなぜこんな顔をしているのだろう。俺の夢の中なのだから俺が生み出した赤井像なのに、そんな顔をする理由がわからなかった。
     ともかく、夢の中で消えていなかったことは、そういうことと捉えていいのだろうか。……お前を殺すのは俺だ。

     それからベルモットに資料を貰って赤井に変装し赤井と関わっていた人たちに会いに行った。ちなみにだがベルモットから貰った資料で初めて赤井が短髪になってることを知った。どっちも似合うのが余計憎い。なんなんだアイツ。殺す。夢の中の赤井も短髪になっていた。なんだか夢の中では長髪でいてほしかった。許さない。殺す!
     赤井の関係者と会ったときの反応から見ても赤井は死んでいるようだった。
     卑劣極まりないアイツなら、抜け道を探し出して生きている可能性もあると考えていた。夢の中の赤井はまだ隣にいるのだ。生きているに違いないと見ていた。
     けれどそれは、たかが夢の話だ。本当に死んでいるらしかった。そしたらあれは、俺の怒りや憎しみの気持ちからあらわれた狂った夢なのだろうか。それなら夢の中のあいつはなぜあんな顔をして俺の事を見ているのだろうか──
     ──突然、後方から扉が開く音がした。
     振り返ると、黒ずくめの長身の男がいた。煙のせいではっきりとした姿は見えなかったが、赤井の変装をしたベルモットがそんな感じの服装をしていたので、赤井に変装したベルモットだろうと判断したのがいけなかった。その男に話しかけたら手榴弾を投げてきやがった。
     (こいつベルモットじゃない!?)
     「だ、誰だ! 誰だお前!?」
     ベルモットには俺を殺せない理由があり、そんな無謀なことをするようには思えなかった。そしたら残るは──
     (ま、まさか、アイツ……生きて、んのか……?)
     そしたら、アイツはなぜ俺の前に現れた? 舐めてんのか? クソッタレ。
     そこからはもう、がむしゃらに赤井のことばかり調べた。罠を仕掛けて情報を引き出し、赤井が銃殺されるまでの流れを何度も確認して辻褄を合わせる作業は、きっと俺が思っているよりもわくわくしていたのだと思う。だって、赤井を本当に殺せるかもしれないのだ。生き生きするに決まっている。
     そうして赤井が成りすましているだろう人物に接触した。勝算は、あった。はずだった。赤井は、俺よりも一枚上手だった。おそらく江戸川コナンという少年の存在も大きかった。コナンくんは赤井側にいたのだ。協力しているのだろう。赤井を捕らえる企画は、頓挫した。赤井が成りすましていたであろう沖矢昴という男は赤井ではなかったし、その上赤井に俺の正体を見破られていた。電話越しに聞いた声が頭の中でリピートする。
     「目先のことに囚われて…狩るべき相手を見誤らないで頂きたい…」
     「君は、敵に回したくない男の一人なんでね…」
     「彼のことは今でも悪かったと思っている…」
     脳裏に過ぎるのは、血塗れになったヒロの最期の姿だ。……クソッタレ。悪かったと思っている、だって? 赤井ほどの男ならばあの時助けることは容易かったはずだ。容易いは言いすぎかもしれないが、けれど、それができる男だったろうに。本当にあの時残された選択肢は、それしかなかったのか? あの日の、ヒロの最期を見たときの、いろんな感情が当時と変わらない鮮度をもって、自分の中で駆けあがるような感覚がした。吐きそうだ。
     あるミュージシャンが自殺した事件で、沖矢昴が左利きだということを知り、赤井は沖矢昴に変装していると確信を得た。
     夢の中では、赤井は変わらず隣にいた。
     ふわふわ。赤井はずっとこちらを見つめている。それ以外のことはしない。不気味だった。ふわふわな雲とお前は不似合いだ。お前の雲なんて硬いに決まってる、帰れ。殺してやる。そんなことを思っても、夢の中の赤井は変わらなかったし、現実の方でも同様であった。

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