彼の愛する蝶「え、震さま、おもどりになってるのですか!?」
思わず大きな声を上げてしまったのは、退魔の剣士である震為雷の身の回りの事をしている使用人、向日葵。彼女は震が拾ってきた人間で、十翼で過ごす内に肉体の成長はとてもゆっくりとなっている為か、それとも過去に原因がある為かは不明だが、見た目も喋り方も幼い。彼女は震がお勤めで不在の時には、他の剣士のところでお勤めをしている事が多かった。それはひとりぼっちが寂しい向日葵への配慮である。そして今回は、雷地豫という女剣士のところで掃除や料理などしていたのだが、その雷地豫から、既に震がお勤めを終えて戻っていることを聞いたのである。
「私も知らなかったの。遠目にお見かけして……もしかしたら、何かご用事があるかもしれないから、震殿がお迎えに来るまではゆっくりしていたら?」
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