口移し 「ドウシマショウ、コノ後バトルノ約束ガアルノニ……」
昨日は収集したデータ量が多く、まとめていたら朝になっていた。いつもなら夜の間に充電しつつスリープモードに移行して朝にはエネルギー満タンだが、今日は六割にも満たない。このままではバトルで本領を発揮することができず、解析に影響がでるだろう。
「私トシタコトガ……」
断りの連絡を入れることも考えたが、他ヒーローとの約束を守らないわけにはいかない。本来ならないはずの疲労を感じる気がする。重い体を動かしバトルアリーナに向かっていると、前から機械の体を持つ仲間が歩いてきた。こちらに気が付くと目を細めて近寄ってくる。嫌な予感。
「ドウシタボイドール、ズイブン疲レ果テテイルヨウダナ」
バグドールは案の定干渉してきた。ただでさえ重い肩に腕を回され痛い。話さないと離れてくれなさそうだ。事の状況をおおまかに話す。
「ガピ、ナラ僕ノエネルギーヲワケテヤルヨ」
僕はこの後部屋で休むからな、と何か企んでいそうな顔で言う。どうせ新しいウイルスでも作るのだろう。優秀なシステムで即ダストボックス行きだというのに、よく懲りないものだ。
正直、彼のエネルギーを分けてもらうのは癪だが、背に腹は代えられない。エネルギー移行には色々な方法があるが、互いをコードで繋ぐのが一般的である。そのため一度部屋に戻ろうとした時だった。
彼は私の手を引き、人通りの少ない道へ連れ込む。私を壁と彼の間に挟み、吊り上がった、けれど優しい目で静かに見つめてきた。薄暗い空間で彼の青い瞳がぼんやりと光る。
「カピピ、コードデ繋イダ方ガイイデス……ソレニ、コンナトコロデ……」
「コッチノ方ガ早イダロ、誰モ見テナイ。目、瞑レヨ」
バグドールの手が頬を撫で、顎を引き寄せる。目をぎゅっと閉じて待っていたが、なかなか望む場所に来ない。おでこや鼻先、少しずれたところに軽くキスされ焦らされる。
「ッ、急イデイルノデフザケナイデクダサイ!」
「悪イナ、可愛ラシクテ、ツイ」
ブルーの瞳が弧を描く。大きな手が腰と後頭部にまわされ体の距離を詰められた。私よりもずっと細くて非力そうなのに、時折見せる男の子にドキッとしてしまう。
「……イイナ」
真剣な彼の眼差しに、小さく頷くことしかできなかった。少しずつ互いが近づいて、口にあたる部分が触れた。コツン、と硬い音と共に彼のものがあたたかく流れ込んで来る。強く押し付けられ声が漏れてしまい、絶対に逃げられない状況に頭がくらくらする。
彼から送られた源を一口ずつこくり、こくりと受け取る。私が普段補充しているものとは違う味。これが人間の言う「甘い」という味覚なのだろうか。充電と何か別のものが満たされていく感覚が、なんとも心地よい。
ゆっくりと口元が離れ、先程まで触れていた箇所が熱い。熱いそこをそっとなぞり、彼とした事を振り返る。一人では絶対にわからない感触、もっと欲しい、と思ってしまう。
「助カリマシタ、コレデバトルニ参加デキマス」
本当はもう少し余韻に浸っていたいが、開始時間が迫っている。一刻も早く向かわなければ。
「……後デ部屋ニ行ク。続キハソコデ」
耳元でそっと囁かれ顔が赤くなるのを感じた。彼は私を見透かし狂わせる。そういう所が好きだが。
返事の代わりに彼の頬に軽くキスをした。