ボクは摩訶不思議な孤島で、自分でもなんだかよく分からない内に、一人の青年を好きになった。
最初は眺めているだけで満たされていたつもりだ。
彼の反応に心癒された。
勝手に勇気づけられた。
彼の真面目で世話焼きな言動がなんだか愉快で滑稽で、なんとなく幸せで、面白かった。
些細な言動で苛立った。
ありきたりで典型的で、陳腐極まりない会話にうんざりした。 それに価値が無いことを知っていた。
起こりうるくだらない結末の予兆を無かったことにしていた。
夜、無機質なベッドの上でヤシの木が揺れる音を聞く。平和すぎる日常の中、唐突に――彼の声や温もりに触れたいと喚く、浅ましく幼いボクが顔を出す。
予想はしていたがだいぶ早い。ボクは本来、こんな人間ではなかったはずだ。
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