謎しとは続き柔らかな朝の日差しを感じて目が覚める。
気分は最悪だ。
昨晩はあの後、使徒をぶっ叩いて寝室へ籠った。鍵も閉めてやった。いつもは2人で狭く感じるベッドをのびのびと転がる事ができて気持ちよかった。いつもこれがいいと思った。あのバカは床にでも寝ていればいいんだ。
夜のことを思い出すと腹が立ってくる。一通り心の中でバカ(使徒)を罵った。その後何となく、別に気まずいとかじゃなくて、そっとドアを開けてみる。人気はなく、奴はどこか出かけて行ったのかもしれない。
フン、と鼻を鳴らして、キッチンへ向かう。目当ては冷蔵庫の中。
念の為、そろりとキッチンも様子を伺うことにする。
無人なのを確認し、両開きの扉を開け、求めていた存在を取り出す。
白いホールケーキ。使徒がどこからか買ってきたものだ。一般的なものと異なるのは、生クリームに飾られているのがフルーツではなく、デフォルメされた使徒の似顔絵であることである。
因みにもう一つ、俺の顔が描かれたものも冷蔵庫にある。
一体どこで買ってきたのかは分からない。だがあいつのせいで小ぶりとはいえホールケーキを2つも食べなくてはいけなくなった。お互いの似顔絵を食べさせ合いっこしようね、と使徒は何やら楽しそうだった。誰がやるか。
似顔絵とはいえ、今あいつの顔を見ているとだんだん昨晩の腹立たしさがふつふつとぶり返してきた。にやり、と笑う似顔絵と目が合う。下手くそで、かわいいね。なんて、言われた言葉が脳内を駆け巡って___
ぐしゃり。
俺は、もう衝動で手に持っていたスプーンで顔の部分を突き刺していた。
そのまま顔を抉り取って、自分にしては大口を開けて口内に放り込む。柔らかい生地と滑らかなクリームがささくれ立った気持ちを宥めてくれるようで。そのまま無心で一人ホールケーキを食べ進めたのだった。バカ使徒め。お前の分なんて残してやるもんか。