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    『君たちはどう生きるか』ネタバレ感想と考察。
    すべて個人の感想・想像です。

    #君たちはどう生きるか

    君生き観た「君たちはどう生きるか」ネタバレ感想と考察。
    すべて個人の感想・想像です。

    ■■一言で言うと:

    映画館で観てよかった!
    あと、何日も経ってもぐるぐる考えてしまうくらい、あの世界観は好き。
    でも、上の世界も下の世界も、住みたくはない。今がいい。


    ■■肌で感じたこと:

    まず、画がとにかく最初から最後まで隅々まで不穏で違和感ばかりなのがすごかった。
    ずっと薄っすら不気味で終始ぞわぞわしてた。
    美しいようで美しくない。
    けど、そこが美しくもある。
    幽霊画のような魅力があると思いました。


    ■■モチーフ:

    ■食べ物:
    上の世界は和食で、下の世界は洋食なのがおもしろかったけど、今までのジブリ飯のように美味しそうではない。あれは敢えてシズル感を消したんじゃないか。
    ヒミのジャムパンは眞人には美味しかったようだが、バター?塗りすぎたし、ジャムの垂れ方がなんか嫌で食べたくはならなかったな。

    ■風景・背景:
    背景画も、今までの作品では自然はとりわけ美しく描かれていたけど、飯画と同じで盛るのはやめたんだな、と感じた。
    上の世界の風景では、屋敷は薄気味悪いし、周りの自然はくすんでパサパサしている。なのに、塔の周辺とかねちょねちょしてて気持ち悪い。

    それなら対比として異世界は美しいのではと少し期待したけど、下の世界も全体的に煤けた感じで、幻想的な美しさはあるものの、触ったら埃っぽそうで、あまり長居したくない感じ。

    唯一、大伯父の庭園はインコズが感激してた通り豊かな楽園風ではあるものの、あそこは逆に盛りすぎで、ビビッドでキラキラした植物や果物の大きさが異様だったりして、不気味さの方が勝っていた。

    その辺は、従来のジブリ作品で世界を美しく描きすぎて、現実よりジブリ世界を愛する人が増えたことへのカウンターなんじゃないかと思いました。


    ■■キーワード:

    上の世界と下の世界に象徴されるように、多くの事象が「2」に関連しているように感じた。
    ダブルミーニングでもあり、1/2でもあり、一対であり、入れ子のように1を内包する1でもあり、みたいな。

    ■作品の楽しみ方としての2:
    ①豊かなイマジネーションの世界をただ不思議だなぁおもしろいなぁと感性で楽しんでも良し
    ②埋め込まれている様々な象徴を考察して裏の意味を深堀りするのも良し

    ■2つのテーマ:
    ①駿監督からのスタジオジブリへの遺言。
    ②古い世代の人からこれからの人へのメッセージ。
    ただ、どちらも結論としては「スクラップ&ビルド」を示唆してるのかなぁとは感じた。

    ■大叔父のダブルミーニング:
    ①駿監督本人
    ②これまでの世界を作ってきた古い世代の人たち?
    大伯父は隠遁の賢者的な風格はありつつ、全体的にボサボサだし、元はといえば現代人なのにファンタジックなデカい宝石を身に着けていたり、ちょっとちぐはぐな感じもある。

    ■大伯父の隕石の意味:
    ①創作上のインスピレーション
    インスピレーションの源としての隕石:
    大伯父≒駿監督は自分が授かったインスピレーションにより下の世界≒ジブリを構築してきたんだけど、それを誰か継ぐのかい継がないのかい!?どっちなんだい!?……なにぃ、継がんのかーーーい!!みたいな寂しさはありつつ、
    そもそも、下の世界は大伯父が孤独に、或いは独善的に作り上げたものなので、結局のところ、まんま引き継ぐことはできないし、継承することがベストとも限らない。
    一旦全部崩して、君たちは君たちの感性により世界を構築しなさいよ、ということなのかなと。

    ②神的なものの象徴(価値観や思想の根源)
    人間が社会を形成する上で方向性を決めるにあたって精神的な基盤・規範となるもの(価値観・思想・倫理など)が必要なんだけど、それをナニ・ドコに定めるかは大伯父≒古い時代の人に委ねられてきて、その結果が現在の社会であると。
    良い世界にしたいといろいろやってはみたけど、なんか変な風に育っちゃった部分とかもあるし、完全なものにはならなかったなぁという、無力感や悔恨のようなものも感じた。
    ここまで頑張って構築したものを継いで欲しい気持ちと、間違ったまま進んでも破滅しかないという予感。
    最後に隕石が爆発するのは、今までの価値観を破壊して、新たな価値観を想像せよということかなと。

    ■上の世界と下の世界:
    上の世界と下の世界は対立概念のようでいて、そうでもないのがおもしろくて、上の世界が現実、下の世界が理想、みたいには割り切れない。
    どっちもちょっとずつ美しく、どっちもちょっとずつ醜い。

    ①上の世界
    欲得や暴力という醜さや「生老病死」があるけど、親子の愛や人間同士の友愛みたいなものの存在も示唆されていて、
    夏子と眞人の関係も、成り行きで家族となった2人が相手を受け入れようと努力する姿には美しさを感じた。
    勝一パパはネオリベ的で下衆さもあるけど、あれはあれで逞しくて生命力に溢れてもいる。家族は大事にしてるし。

    ②下の世界
    静謐な美しさはあるものの、どこもかしこも古びて薄暗いし鳥が不気味。キリコが獲っていた魚も不気味。
    半透明の人たちは穏やかで礼儀正しいけど、自分たちの食べ物を獲ることもせず、ただ待っているだけで。
    自分たちの手を汚さないで生きているのが現代人の象徴と感じた。
    ワラワラだけがかわいいが、なんか既視感あるなぁと思ってたんだけど、アレだ、炎炎ノ消防隊のメラメラとプスプスだ。

    ■石の積み木
    石の積み木も2つの意味があるのでは。

    ①作品の創出とその結果のバランス
    大伯父≒駿監督のインスピレーションにより積み木が積まれ作品が生み出されるけど、それは繊細で難しいバランスで成功している。
    最後、眞人が自分には穢れがあるとして大伯父の積み木を受け取り拒否した通り、作品は穢れなき純粋な心で作られるべき。
    しかし、積み木が下の世界の命運を決めていたように、作品が社会に及ぼす影響は大きい。(だからなおさら、穢れなき心が必要)

    ②現実世界を構築している要素(社会制度など)
    大伯父の積み木がほんのちょっとでもバランスを崩すと下の世界がヤバいことになるように、現実社会でも社会を構築している様々な要素・力関係の危ういバランスで保たれている。
    しかも、それは積み木を摘むように、今までの人たちが少しずつ積み上げてきたもので。
    積み木の積み方の間違えでその先の未来が大きく変わっていく。
    同時に、現実世界でも社会を積み木≒ゲームのように軽い気持ちで動かそうとする勢がいて(ネオリベとか?)、そういう権力者たちへの批判でもあるのでは。
    最後、眞人は大伯父の積み木ではなく自分が拾った石を持ち帰ったので、積み木を積むことは継承しつつ、旧時代とは違う価値観で社会を築くべしってことかな。


    ■■キャラクター

    ■鳥:
    アオサギ筆頭に鳥がたくさん出てくるのもおもしろかった。
    大伯父が持ち込んだペリカンとインコは、外来生物みたいに人間が勝手に操作したモノの象徴かな?
    ペリカンは置かれた場所で渋々なんとか生きてる。
    インコは過剰適応して、本来草食のはずなのに肉食化して増えすぎてる。
    ペリカンとインコはそれぞれ何を表してたのか、ちょっとわからなかった。

    ■人物:
    ①キリコ。
    一番印象的だった。
    下の世界のキリコは、ワラワラや半透明な人たちのために汚れ仕事を請け負って生命を繋いでいる、逞しくも心優しい女性で非常にカッコイイ。
    子供のために母親役も父親役も両方こなすシングルマザーみたいな、自立した人間。
    その一方、上の世界のキリコ婆は捻くれてこすっからいババァで。
    キリコが年を取ってキリコ婆になったかと思うと物悲しい感じもするけど、逆に、キリコ婆はあの形だけど内面にあのキリコを宿してもいると考えるとなかなか滾るものがある。
    人は見かけでその魂は測れないが、語らずとも醸し出すものもある。だから眞人がキリコがキリコ婆だと気づいたんだろう。

    ②ワラワラ:
    作中で人間に生まれる魂だと説明があったけど、
    少子化を取り巻く環境が表現されているように感じた。
    半透明の人たちはワラワラを傍観していて(子供を産まない現代人+少子化に無策な社会?)、
    キリコが一人で頑張ってワラワラを養ってる(子供を育むバイタリティのある一部の人や福祉?)、
    しかし、巣立つワラワラを大伯父が持ち込んだペリカンが食べてしまう(人間が作り出した子供に害のある環境・社会)、
    ヒミがペリカンを焼くときにワラワラも巻き添えになるのは、ペリカンはペリカンで社会の一部だから、ペリカンを焼くと子供も巻き添えになるってことかなぁ……とか
    ワラワラのところはいろいろ想像が膨らむ。

    ③ヒミ:
    ヒミは下の世界では自由なプリンセスだけど、上の世界ではなかなか複雑な状況だよね。
    ヒミ=ヒサコは時系列で見ると、

    塔の中に入る=下の世界に行く

    ヒミとして活躍

    懐妊した夏子が来て、夏子が勝一と結婚していることを知る

    眞人が来て、自分と勝一の間の子供であると知る

    眞人から元の世界に戻ると火事で死ぬと予告される

    しかし、ヒサコが死ななければ勝一は夏子と結ばれず子供も生まれない

    それを飲み込んだうえで、塔の中に入った時点の1年後に帰還

    眞人宛に本を残す

    正一と結婚・眞人誕生・火災

    という流れなわけで。

    ばあやが、ヒサコが塔から戻ったとき笑っていたと証言していたけど、ヒサコは自分の運命を知って、悟りを開いたような境地に達したのかなぁ。

    知り合いが、宗教的イニシエーションをにより未来だか来世だからのイメージを受け、「この先どうなるか見えたので、死が怖くなくなった」と言っていたのだが、そういう感じかも?と想像しつつ、
    しかし、十代?の女の子に受け止めさせるにはあまりにもキツすぎる気もする。
    駿監督好みの戦う聖女キャラなのかなぁ。

    ④夏子:
    夏子は登場から美しいモンストレスのような不気味さ。
    母というより姉のように眞人を可愛がろうと努力しているし、上品かつ鷹揚で悪い人間ではない。
    眞人がティーンエージャーになるまで姉家族と没交渉だったらしいのに、姉の死後すぐに姉の元夫と喜々として結婚してるのが、昔の日本では亡くなった人のきょうだいと再婚というのはままあったという現代との感覚の違いを割り引いても、微妙に胡散臭さがある。
    ただそれも、お屋敷のばあやたちを養わないといけないから勝一に取り入った可能性?など考えると、夏子も生きるのに必死なのかもしれないと思ったり。

    産屋で夏子が眞人に大っ嫌い!と叫んだのも、あれは多分一部本音も入ってそうで、でも、夏子が眞人を遠ざけることで救おうとしたのも本当だろうと思う。
    その両方を引き受けて夏子を救おうとした眞人は全きヒーローだった。(子供にその荷を負わせるなよ、みたいな気持ちにはなるけど)

    ⑤眞人:
    眞人は今ひとつ捉えどころのない人物で、何を考えているのかわかりにくい。
    自分で頭に傷をつける下りも、そこまでやるか?っていう小狡さがあるんだけど、それを罪だと認識して大伯父に告白する善良さも持ち合わせているし、夏子のことも、いろいろ思うところはあろうけど、家長が絶対という時代を割り引いても、家族として受け入れようと努力している。
    しかし、アオサギが不気味だからっていきなり矢で射ろうとするのはちょっと乱暴かも。

    ⑥勝一:
    今ならネオリベ勢。
    権力、お金、多分美女も大好き、札束で人を殴るような俗人の極みだけど、自分なりに家族は大事にしてるし、部下もこき使ったりせずちゃんと慕われてる感じなので、非人情ではないんだろうなと。
    (身内にだけ親切って可能性もあるけど)
    個人的におもしろかったのが、眞人&夏子奪還のために塔に向かうとき、ありったけの武器と道具と一緒に食糧として板チョコを持っていったところ。
    ひどく現実的で生きる力がある。
    その一方、デカインコで放心状態になってたのは、現実ではない、インスピレーションやスピリチュアル的な世界には免疫がないんだろうなと。
    友達にいたらおもしろい人だと思う。


    ■■まとめ:

    ものすごく、いろんな見方・楽しみ方ができる作品だと思う。
    観た人たちが「感動した!」「泣いた!」みたいなんじゃなくて、「……うーーーん、まぁ、みんな観てくれ」ってなってたのわかるし、大っぴらにネタバレしてくる人がいなかったのはありがたかったな。
    絶対、情報あんまり入れずに観た方がいい作品。

    そして、キリコさん好き♡♡♡
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