黒雨 ピリリリ、ピリリリ。
雨粒が地面を叩きつける割り込んで、普段よりも音量を上げたアラームが十五時を知らせた。最低限の健康のためにもこいつには必ず従えと敦豪にもらった時計の頭を叩き、小休止に入る。
「ん……ふう」
両腕を真上に伸ばして深呼吸をし、息を吐きながら左右に倒れる。ずり落ちたサスペンダーを直しがてら肩で無限大を描くと、悩ましげともとれる声が口をついて出た。憎きはずの豪雨に助けられて事なきを得る。
まだ止まないかとデスク脇の窓を見やると、己の線の細さが目についた。相手は自分自身であるため遠慮なしに睨みつけてやる。こんと乾咳をして寒がるふりをしながら、俺はサイズがいくつも上の上着を羽織った。
「お寒いのでしたら、暖房をつけましょうか」
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