手料理最近「メタナイト卿の元気がない」とソードとブレイドから聞いたんだ。
ずっと睡眠を取っていらっしゃらないとか、ご飯も適当に、いや、全く取っていらっしゃらないとか何とか言っていたのを聞いて、ぼくはこのままではメタナイト卿が死んじゃうかと思って凄く心配になった。
どうにかしてメタナイト卿を元気付けてあげたくって、ご飯作りをしようって考えたの。
でも、コックカービィはカワサキやお城の中にある道具を使わないと出来ないし、それにコピー能力を使うよりも自分の力でメタナイト卿を元気にしてあげたくって……そう思ったら自然にお城のキッチンに向かって足が動いていたんだ。
お城のキッチンには沢山のワドルディがいて忙しそうにしていた。多分陛下の食事の準備をしているのだろう。
「ぽよ!」
ぼくが声をかけると、ひとりのワドルディがこちらを向く。身振り手振りでぼくの気持ちを伝えたら、他のワドルディと何か話をしていてそのまま出ていっちゃった。
やっぱり無理だよね…と思っていたら、ワドルドゥ隊長をつれてきてくれたみたいで色々と相談にのってくれた。
ワドルドゥ隊長との話では、
「最低限の食材なら使っていいこと。全て食材を食べたら暫くタダ働き。」
「使ったら綺麗に片付ける。片付けも料理のうち。」
「初心者のカービィには、味付けの簡単なカレーライスが向いている。」
ということで、アシスタントのワドルディと料理の本を貸してくれた。
色んな人が料理を作っていたのは周りで見ていたけれど、実際に作れるのかは不安だった。
そんなぼくの様子を見たからなのか、ひとりのワドルディがジャガイモの皮を剥く動作を教えてくれた。
ぼくはそれを見て、上手じゃないけれど真似をして皮をむいた。人参は上手にむけたけど、玉葱は目が痛くなって泣いちゃった。
その姿を見た他のワドルディが、目の痛みが落ち着くまでの間にご飯の炊き方を教えてくれた。はかったお米をお水と一緒に機械に入れてボタンを押すと簡単にご飯ができるんだって。
ぼくはそれを聞いて嬉しくなっちゃって、にこにこしながらボタンを押した。
それからしばらくして、一生懸命切った野菜と取っておいてくれたお肉を使ってお鍋で軽く炒めてからお水を入れたの。
ファイヤーカービィで火には慣れていたけれど料理の時は別、あまりの熱さにびっくりしちゃった。
そのあと、ぐつぐつと煮込む音を聞いていたら眠くなっちゃって……ワドルディが起こしてくれたから何とかお水がなくならずにすんだんだ。
火が通ったカレーの具にルーを入れてまぜまぜする。陛下が好きな辛さのカレールーが余っていて良かったなぁ。って思いながら、すぅ…。って溶けていくルーをぼくは見ていた。
あぁ、お腹すいたなぁ。おいしそうだなぁ。でもダメダメ、これはメタナイト卿にあげるんだから。と何度も何度も我慢しながら、最後にウィスピーウッズのおいしいりんごをすりおろしてカレーが完成した。
ちょうど炊き上がったご飯と一緒にカレーと同じ器に盛り付ける。ワドルドゥ隊長は、「多分カービィ殿も食べたいでしょうし、メタナイト卿もカービィ殿と一緒に食事となれば食べるのでは?」と言ってくれた。
確かにぼくもメタナイト卿が食べている姿を見てぼくは我慢するっていうことも無理だし、それよりもメタナイト卿がそんなぼくの姿を見てぼくに譲ってくれるかもしれない。そんなの何のために作ったのかが分からなくなっちゃう。
ワドルドゥ隊長の言葉の通りにぼくとメタナイト卿のカレーの準備をして、ぼくはメタナイト卿の部屋に向かった。
「ぽうよ!」
ノックができないので大きな声を出したら、ソードナイトが顔を出してくれた。
「カービィ殿…。どうされた……って、それは…?」
「カレーぽよ。めややいと。」と伝えると後ろから
「カービィ殿の手作りのカレーであります。メタナイト卿に食べさせたいと……。」
「卿に……ありがたい……。」
「キッチンにお二人の分も置いてありますのでブレイド殿と是非。」
ワドルドゥ隊長がぼくの代わりに色々とお話ししてくれたおかげで2人は喜んでキッチンに向かい、部屋にはぼくとメタナイト卿のふたりきりになった。
「………。」
重い空気を出したメタナイト卿がぼくの前に来る。
「…これを……カービィが……?」
大きさが目茶苦茶の野菜に、沢山のお肉。山盛りご飯に福神漬けがついているカレーを見て仮面をずらしたメタナイト卿はそっとスプーンを持ち、器を持ち上げる。
カレーをすくったスプーンを口に運び、ゆっくりと噛みしめる動作をするメタナイト卿。しばらくそのまま動かなかった彼の瞳からポロリと涙がこぼれた。
「ぽよ!!」
「…おいしい……おいしいぞ…カービィ……。あぁ、食べ物がこんなにおいしかったなんて……。」
泣きながらカレーを食べるメタナイト卿を、ぼくはただ見つめる事しかできなかった。
しばらくして半分ほど食べ終わった頃に落ち着いたメタナイト卿が色々とお話をしてくれた。
ナイトメアとの戦いが終わった後も仕事が立て込んでバタバタしていたが、数日前に落ち着いた途端に燃え尽きて何も出来なくなってしまった。…と。
眠る事も食べる事もおっくうになっていたが、君のお陰で元気が出た。と優しく微笑むメタナイト卿にぼくは彼にもっと元気を出してもらいたいと思い自分のカレーを差し出した。
「…ふふっ。そのカレーは君のだろう?……好きな食事をよく我慢したな。一緒に食べようか。」
そう言いながらとなり同士でゆっくり食事をする。
その時のメタナイト卿の空気はさっきまでとは違い、やわらかくなっていた。
食べ終わると疲れが一気にきたのか眠たくなってきた。目を擦るとメタナイト卿が心配してこちらを覗き込む。
「今日は一生懸命がんばったものな。……私も何だか眠たくなってきた。…今日は泊まっていってくれるか?多分君が居れば安心して眠りにつけそうだ。」
そう言われ嬉しくなって頷くと、メタナイト卿は優しく寝室に招き入れてくれた。
その後は…ねむっちゃったから…覚えてないや。
でも次の日からは少しずつだけどメタナイト卿は元気を取り戻していって、「まだまだどこかの世界に魔獣が居て、ここでまた悪さをするかもしれない。気を抜かずにトレーニングやパトロールに勤しまなくては。」って言いながら2人と一緒に村をパトロールしているみたい。
頑張ってね。メタナイト卿。ぼくもがんばるよ。
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おまけ
「カービィのカレー、美味しかったな。」
「ああ。」
カチャ
「只今戻りました、メタナイト卿………!」
「メタナイト卿……。」
「…寝ていらっしゃる……。しかもカービィ殿まで…。」
「あの卿が完食された上に睡眠まで……さすがカービィ殿……。」
「「……主を救ってくれてありがとう。」」