【輝きの名を呼ぶ】「ルーメン」
「はい」
くるり。ふわふわと癖のある髪が振り向きざまに風にゆられ、あおられ、くらりと揺れる。
「ドクター?」
自身のコードネームを呼ばれ、しかし続きの言葉がないことに疑問を抱いては首を傾げる。ルーメンはきょとんとした顔のままドクターの顔を覗き込み、しかし彼が何か考え込んでいる様子であることを察し静かに書類の整理へと戻る。
「ルーメン」
「はい、どうされましたか?」
「ルーメン、ルーメン」
ふふ、と微かにほころぶ。ドクターは何度かそうして、その名を慈しむように、口元で転がすように繰り返す。ルーメンは困ったように眉を下げて、ドクターの手に軽く触れる。
「僕はここにいますよ、ドクター。そんなに呼んで、どうかされましたか?」
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