新しい主はその日変わった。頼りなげだった面差しは消え、大ぶりな武器も自在に操る。
なによりその振る舞いは、亡き魔皇を思わせる。今もまた、仕草や声色さえもかたどって、アレスは満足げに息をつく。
「お前の入れた茶は、甘くてうまいな」
服の裾に火が点いた、ガープはそんな心地がした。食器を鳴らしたことを詫びながら、かしげている首から、逃げるように席を立つ。
力を与えたとは聞いているが、これではまるで生き写しだ。不意に火の粉が触れるたび、浮かんだ熱が感傷を炙り出す。
だからきっと、茶の代わりも必要だろう。同じ手順をなぞりながら、手元と記憶に繰り返した日々を追う。
「なにを浸っている」と、別の笑い声が背中を小突いた。