人心地着いたところで、魔皇は早々に立ち上がった。
合戦が近い。演習を繰り返した分、彼も消耗しているはずだ。ガープの心配をよそに、体はまだ十分動く、と得物を掲げて見せる。
頂点としてふさわしい強さを。楔のようになっていた鍛錬は、今はただ、自分らしくあるための習慣になったという。その楽しみを添えたのが自分たちだったと、かつて語った顔が今、笑い顔に重なっている。
「少し走り込んでくる。貴様もどうだ?」
言いながらその場で駈けている足は、すぐにでも走り出しそうだ。休憩をしたら合流を。答えて見送った背中はもう、柱の向こうに消えている。
彼の言う「少し」は少しでは済まない。その事を思い出したのは合流したあとだった。