「おかえり。陸はどうだった?」
「別に変わんねぇぞ。成敗と成敗と……それから成敗してたくらいだ」
いつもの受け答えをして、魔王が苦笑を浮かべる。お決まりとなった流れはしかし、かしげた小赤鬼の首にせき止められた。
「俺はここのモンじゃねぇのに、おかえりって言ってもいいのか?」
形式上は配下となったが、常に指示を受けているわけではない。それでも顔一つで竜宮を歩き回れるのは、彼の計らいに他ならなかった。
「根城がもうひとつ欲しくなったら、いくらでも居るといい。オレはいつでも歓迎するよ」
変わらず玉座に掛けている彼は、そう望んだことはあるのだろうか。もし叶えられるなら、と思う。自分の根城で出迎えてやれればいいと。
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