いつも思ってたんだけど。
独り言のように始まった疑問は、魔皇の手元を見詰めて止まる。カップをつかむ形で置かれた手は、しかし持ち上げることなく離れていく。
「飲めないのにどうして入れるんだ?」
例えば、進行中の計画の確認。これからの提案と議論。そして一眠りからの気だるい時間。口にする茶は、銘柄こそ巡回するものの、どれもすっかり馴染んだ香りだ。
だからこそ、どんな時でも変わらずこなせる。習慣のようなものだと答えると、そういうもんか、とアレスはカップに目を落とす。
そこで終わるかと思われた疑問が、自分の手元まで伸びていることに、ガープは気付いた。減ることのない茶は、誤魔化すための行き先を、まだ決め兼ねている。