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    白いでかい犬

    オタクです

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    白いでかい犬

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    2016年スカファランワンドロ

    スカファラン③ 小さな花の集まりを、そっと指先でつまんでみる。一つ捕まえれば繋がれた他の部分も付いてきて、布全体が海の波のように揺れた。
     「そういう趣味かよ」
     腰回りを一周して覆い、端をきゅっと結ばれた白いレースはスカイファイアーが用意した嗜好だ。黒と赤で塗装されたパーツに植物を基調とした紋様の刺繍が揺れる。誰に言われたわけではないが、不釣り合いだと自分でもよく分かる。
     「ケミカルレース、つまり機械レース。特殊な用紙に機械で模様を刺繍した後、溶液を使って下地を溶かしてレース部分を取り出すんだ」
     俺にこんな格好をさせた彼は、先ほどから喜びの声で解釈を唱えている。
     「私のドロレス、お人形さんみたいだ」
     「誰だよ。あと言い過ぎだろ」
     「じゃああれだ、アイドル。踊ってみせて」
     「破くぞ」
     「大丈夫だよ。さあ」
     両手を広げて投げられた言葉にすっと胸を逸らして。片足を床に縫い止めたままもう片方を真っ直ぐ上げて一回転。不規則に揺れていたレースが一つの大きな花を咲かせるように広がり、真っ白な円を描いた。光に透ける、白いオーラが足元から浮上する。お辞儀でもした方がそれらしいだろうか。
     俺を見つめているスカイファイアーはうっとりと貌を染めている。特に赤い目元から、俺の足元から上がったのと同じ小さな輝きが舞っている気がした。密度の濃い排気が聞こえる。
     「こういう趣味でよかった」
     「噛み締めんなよ……」
     本気で喜んでいるらしいスカイファイアーから一歩引くも、ゆっくりと距離を詰められた。下腹部にまとわりついていたレースをそっと外し、今度は頭の上から被せてくる。思わず俯き身が竦んでしまう。
     「ねえ、顔を上げて。目を閉じてみせてよ」
     俯いたままの俺は、ようやくスカイファイアーの思惑に気付いた。というか、彼の駆け足で展開される妄想に追いついた。羽のような白いレースも、こんな行為も、まるでフィクションだ。
     「今の君ってまるで、」
     「言うなよ。恥ずかしいんだ」
     けれどスカイファイアーがぱあっと、それこそ花が咲くみたいに笑うものだから、決して嫌とは思えないのだ。
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