残り100体、相手はバーサーカー。
対するこちらの陣営は先ほど権限したばかりのサーバント3体であった。
ガチャ神引きしちゃったー♪と浮かれていたのも束の間、マスターの表情は曇り、澱んでいた。
「編成……間違えて来ちゃった……」
マスターは悲しげに呟いた。何せ彼らは再臨すらしていない。ひよっこもひよっこ。言うなればまだ赤子の様な存在である。
控えていたパーシヴァルの目の前で三人がなす術なくキラキラと座に還っていった。
サブからフロントに駆り出されたのはライダー2名、ランサー1名であった。
エドワード・ティーチ。
バーソロミュー・ロバーツ。
パーシヴァル・ド・ゲール。
「ごめん!!!よろしく!!!」
マスターに懇願されてしまっては仕方がない。何とかしよう。ライダーとランサーは揃って表舞台に降り立った。
千切っては投げ、千切っては投げ。
殴れども殴れども、敵陣営の数が減った気はしない。いや、確実に削っているのだが。眼前に群がるバーサーカーの群にパーシヴァルは些か辟易していた。
ライダー2人は喧々轟々と言い争いをしながら多数の敵を蹴散らしていく。私もやらねば。そう思いパーシヴァルは槍を強く握りしめた。
「バーソロ、そろそろお疲れでちかぁ〜?動きが鈍っておりますゾ〜」
「は!?そんな訳ないだろう、お前と一緒にするな髭!このクソ髭!!」
「おやおや髭も生えないお子ちゃまバーソロちゃんはこの髭に嫉妬嫉妬〜?恥ずかしいでちゅね〜」
「殺す!!!」
「やんのかコラ!」
「それはこちらの台詞だ!!」
「やめなさい、2人とも!!今は眼前の敵を倒す方が先でしょう!」
「ぐっ……髭!お前のせいでパーシヴァルに怒られただろ!」
「拙者のせいにしないでくだちい〜憧れの騎士さまの前でぶりっ子バーソロや〜い」
「2人とも!!!前!!!!!」
言い争いをしている2人に向かって敵が突進してきていた。パーシヴァルは思わず声を荒げた。その声に反応し、黒髭がバーソロミューの襟首を掴みパーシヴァルの方へと放り投げた。
勢いよく投げつけられた事もあり、また、79キロの肉体が飛んで来るとも思わず、バーソロミューとパーシヴァルはバーサーカー陣営から少し離れた所まで吹き飛んだ。
生身の肉体では不可能だっただろう。
「いっ…たぁ……鎧に直撃した……」
「《海賊の誉れ》!……《嵐の航海者》」
黒髭はスキルを展開した。
バーサーカーの群れは黒髭に向かって一斉に攻撃を仕掛けている。
バーソロミューは舌打ちを一つして立ち上がった。
「《海賊紳士》!《疾風の掠奪》!!からの、《嵐の航海者》!!!」
「待てバーソロミュー!貴方の宝具はこの位置ではエドワードに……」
「分かっている。……あまり海賊を見くびらない方がいい、清き円卓の騎士」
「クイーンアンズ・リベンジ!!」
「ブラック・ダーティー・バーティー・ハウリング!!!」
ライダーの全体宝具は山の様に存在したバーサーカーの殆どを蹴散らした。
パーシヴァルが危惧していた様に敵陣営の真ん中に位置していた黒髭はバーソロミューの宝具に巻き込まれ、砲撃を何発か浴びており2メートルを超える長身は血に塗れていた。
「なんだ、生きていたのか」
「バーソロちゃんの方が満身創痍に見えますけど〜?さっき騎士さまにぶつかった時痛い痛いでちたね〜」
「あの鎧硬いんだよ、そもそもパーシヴァルが受け止めてくれなかったらやばかったぞ!加減をしれバカ髭!!」
「抱きしめられて良かったでちゅね〜」
残り数体となったバーサーカーが一斉に襲いかかってくる。
パーシヴァルは槍を構えた。
「ロンギヌス…!カウントゼロッ!!!」
パーシヴァルが宝具を放つと残っていた全ての敵陣営は跡形もなく消え去り、黒髭の傷を少しだけ癒した。
「パーシヴァルの宝具は1番体力の少ないサーヴァントの傷を癒すんだ、癒されたんだから素直に満身創痍は自分だって認めろバカ!」
「お二人とも仲が良いのですね」
「仲良くない!!!」
「ゲロゲロ〜バブちゃんのバーソロと仲良しとか反吐が出ますなぁ〜」
「ふふ、そうでしたか、申し訳ない。バーソロミューは私にはそんなに気さくに話してはくれないから、つい」
「申し訳ないーーー!!!!ごめんね、三人ともーーー!!」
「いや、本当に。バーサーカー相手だったから良いものの……次からは気をつけてくれたまえ、何せ我々は礼装すら付けていないのだから。ピックアップで出たからってあまり浮かれない様に」
「ウッ……キモに命じます……」
マスターが健やかである事は当然として、どうか全てが終わるその日まで、先日友人になったばかりの海賊たちも、健やかであれ。
クラスも属性も生きた世代も違うサーヴァントとの共闘を終えてパーシヴァルは今なお騒ぎ立てる海賊を見つめながら微笑みを浮かべた。