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    霊基異常で幼児化してしまったパ卿と、それに巻き込まれるバソとマスター(パーバソ)③
    パ、大きくなります。

    ▪️霊基異常〜パーバソのパが不思議な力で幼児化しちゃった!不定期日誌③〜バソ著





    ▪️DAY3

    私はずっとパーシヴァルの成長について考えている。摩訶不思議な力、と言ってしまえばそれまでだが(何せ、あのマーリンの仕業だから!)。

    「パーシヴァルってお姫様だったの……?」
    「ちがいます!」
    「マスター。今のは愛だとか恋だとか言う以前に。その、あれだ。ちょっと言い難いんだけども、……これ、ただの魔力供給じゃないのかな?」

    王子様のキスでパーシヴァルは少しだけ成長した。けれど童話の中の姫は口付けを一度交わしただけで呪いは解けていた。
    パーシヴァルの呪いは完全には解けなかった。
    それに、触れるだけの児戯的なキスで随分と魔力を持って行かれてしまった。
    ならば、マスターからの魔力供給であればもっと簡単に成長出来るのではないか?
    私でなくとも、愛がなくとも。

    そう思い、私はマスターに試してみる様お願いした。私とて本当は己の手でパーシヴァルを元の姿に戻してやりたい。
    けれど、手間をかける事なく戻れるのならばそれに越した事はないじゃないか。

    マスターがパーシヴァルの腕を掴んだ。
    キスではなく、手を掴んだのはどうやら私達の関係に配慮しての事らしい。
    それでも、魔力が注がれて行くのを見ながら私はただぼうっと待つ事しか出来なかった。




    ▪️

    「いや、デッカ……」

    マスターからの魔力供給により、パーシヴァルは大きくなった。——文字通り、大きくなった。
    成長ではなかった。10歳のパーシヴァルがそのまま巨大化しただけであった。
    マーリンからの言葉が聞こえてくるようだ。

    ——愛情注いでいればすぐ戻ると私は言った筈だよ〜?

    マスターからパーシヴァルへ向けられるのは愛情ではない。親愛かもしれないけれど、愛情ではない。
    だから成長しなかったのだろう。
    マスターの魔力だけを喰らい、大きくなってしまった。

    「バート……わたしはどうしたら……」

    私と50センチ程も身長差があったと言うのに、今や私をゆうに越している。パーシヴァルの頭は天井付近の高さとなっていた。
    けれど、顔だちは幼いままであるし、困った様に私を見つめる眼差しも変わらないままだ。

    大きくなった彼はまた、花を手にしていた。
    そり返り、星型に開いたオレンジ色をした小さな花が集まっていた。
    名前は知らない。

    何にせよ、身体だけ大きくなっても意味はない。
    私はパーシヴァルに触れて、魔力を奪うべく画策した。奪う事ならまかせてくれ。

    魔力を奪う度に少しずつパーシヴァルの身体は小さくなり、やがて10歳の——年相応の体付きへと変貌した。

    「俺じゃ役に立てないみたい……ごめんね、パーシヴァル。マーリンにはきつくお灸を据えておくから」
    「いえ!お気づかいいただき、ありがとうございます」
    「うーん……やっぱり私が魔力を譲渡するしか方法はないかな」

    仕方なく私がやります、という雰囲気を醸し出したものの(ちゃんと醸し出せていただろうか?)、その実、マスターがパーシヴァルを元に戻せなくて良かったと安堵している自分もいる。
    マスターとは言え、己の恋人を救われるのはちょっと。いや、かなり。悔しい。
    私が、私自身の手でパーシヴァルを元に戻したい。
    必ず戻してみせる、という決意をここに記しておこう。この戦いが終わるまでの仮初の恋だとしても私はパーシヴァルの恋人だ。

    恋人の危機を救えなくて何がサーヴァントだ、私は今のパーシヴァルも愛らしいと思っているが、やはり私の恋人は成人した、あのパーシヴァルなのだ。

    そうだ、元に戻った状態でお礼にメカクレになってもらおう。
    それくらいの褒美があっても良いはずだ!

    よし、俄然やる気が沸いてきた。




    己を王子様と称するのは若干気恥ずかしい。
    だが、今のパーシヴァルはまごう事なくお姫様だ。10歳程度まで成長したパーシヴァルは可愛く、あどけない笑みを浮かべながらも時折大人びた表情をする。
    その表情が私には憂いを帯びた姫に見えた。惚れた欲目というやつかもしれない。

    パーシヴァルは手にしていたオレンジ色をした花をマスターへ手渡していた。
    パーシヴァルの肉体の変化がある度に、花を持っている。花と言えば花の魔術師・マーリンだが、此度の異常も彼が引き起こしたものだ。関係がない訳がない。何かしらのメッセージが込められているはずだ。
    だが、私には花を愛でる習慣がなかった。マーリンからのメッセージが読み取れない。
    何せ海に花は咲いていないのだから!

    とにかく。
    パーシヴァルを戻すのには魔力と愛の両方が必要だと言う事は理解した。
    彼は大食漢な為、私の魔力はどんどん喰われ削れいずれ消えてしまうかもしれない。それでもパーシヴァルを救えるのなら、それも吝かではな   嘘だ。今のは無し。やはり私はパーシヴァルと共にいたい。共に生きたい。
    ならば、何とかするしかない。
    愛ならば無尽蔵に出せる自信があるけども、魔力の方は私がマスターから供給して貰わなければ。


    私にしか、パーシヴァルを救えない。
    マスターでさえ無理だった。
    その事実は私の独占欲を満たすには充分だった。

    満足した為、今日はメカクレは無し。
    後日の楽しみにとっておこう。

    進展があれば、また記す。
    明日にでもまた続きを記せれば良いのだが。

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