▪️霊基異常〜パーバソのパが不思議な力で幼児化しちゃった!不定期日誌④〜バソ著
▪️DAY4
今日はどうしてもマスターとレイシフトしなければならなくなった。
パーシヴァルを置いていくのは不安だったが今の彼では怪我をしてしまうかもしれない。
それだけで済めばいいが、それ以上の事を危惧し、パーシヴァルには私の部屋で待っていて貰う事にした。
それに、あまり他のサーヴァントには可愛いパーシヴァルを見せたくはない。
「いい子にしてるんだよ。紅茶を淹れて飲んでもいいし茶菓子も食べていい。あぁ、そこの棚の本だけは駄目だ。それ以外の本なら読んでも問題ないよ」
「はい。お気をつけて」
「黒髭が来てもドアを開けちゃいけないよ。パーシィの教育に悪い!」
あの棚に並べてある薄めの本はパーシヴァルの目には少々毒だ。さすがに見せたくない!後にこの日誌を見る少年少女も見ないように!
少し寂しげに手を振るパーシヴァルの頭を撫でて私はマスターと共にレイシフトした。
行く前からすでに帰りたい気持ちでいっぱいだった。
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開けるな、と言ったのに。
黒髭はレイシフトから帰ってきた私の姿を見つけるなりニヤニヤしながら寄ってきた。
「バーソロぉ、随分とかーわいいお宝隠してますなぁ〜?」
「は?」
「オタクの王子様、えらく可愛い姿になっちゃってまぁ……見ちゃった♡隠された秘宝なんざ、見たくなるのは当然だろ」
「やらんからな」
「拙者、イケメン撲滅委員会名誉会長なんで。本当要らない」
「私を座に還すつもりでここに……?まぁ私は伊達男だし可愛いからな、よく言われる。ムサ苦しい髭が私を撲滅したい気持ちは分からんでもない」
「相変わらず自意識が高いアラフォーでつね〜。あ、そうそう。王子様腹空かせまくってたからエミヤの飯食わせてるんで。後で食堂に皿返しとけよ〜」
「………………〜〜〜っクソっ、あ、ありがとう、助かった」
「……青筋立てて礼を言われたのは初めてですわ〜拙者ハジメテを奪われてしまいましたな〜」
「じゃっ、失礼する!」
「可愛い彼ピにヨロシク〜」
腹が減ったなら茶菓子をすべて食べ尽くしても良かったのに。
大量に用意した茶菓子はもともとパーシヴァルの為に用意してあったものだし、出しておいた茶葉は彼の好むものであるし、茶器も普段彼が好んで使っているものを出しておいた。
——そもそも、サーヴァントが空腹?
サーヴァントは食事も睡眠も必要としない。
なのに空腹を覚えているという事はパーシヴァルに何か異常が起きているのではないか。
私は自室へと駆けた。何か低い音が中から聞こえる。
「パーシィ!無事かい!?」
「バート!おかえり、首尾は上々かな?」
ぐうぅ、と部屋中に低い音が響いた。外にまで聞こえていたのは腹の音だった。
——パーシヴァルの腹の音だった。
なるほど、この音を聞けば黒髭が気になるのも仕方がない事だったかもしれない。
黒髭が言っていた通り、食事をした後の皿もテーブルに乗せられている。
己の腹の音に頬を赤らめるパーシヴァルは可愛い。とても可愛い。可愛い可愛いとても可愛い。
だが、サーヴァントになって食事を娯楽として楽しむ事はあっても空腹を感じた事はない。明らかに異常事態だった。
「はらの音を聞くのは久しぶりだ」
「大丈夫かい?何か身体に異常とか、」
私が話している途中だったがパーシヴァルは私に抱きついてきた。真上から見ているせいでメカクレに見える。素晴らしい。
さておき。
「バートにこうしたい、と。まっている間ずっと思ってたよ」
「……あれ、音が消えた」
パーシヴァルが私に抱きついた途端、厳密に言えば私に触れた途端音が消えた。
そう言えば、レイシフトに出るまでずっと触れていた気がする。
ふむ、今のパーシヴァルは私に触れていないといけないのか。
「バート、かがんでほしい」
「ん?どうかしたかい?」
パーシヴァルは私に口付けてきた。
空腹の原因は魔力不足だったのか。気付かずに悪い事をしてしまった。
辺り一面に花が降る。青い、愛らしい花が辺り一面に降り注いだ。悲しい事に私はこの花の名前も知らない。
知っていれば何かこの状況を変えられたかも知れないのに。私が判別出来るのは色や大きさだけだ。
「どうしよう、バート。私は私を止められない、感情のままに動いてしまう。きしなのに。私は円卓のきしであり、……あなたのきしでありたい、のに、」
今は——そうだな、15歳くらいか。
なるほど、お年頃、というやつなのかもしれない。私はパーシヴァルの涙を拭ってやった。そうしたら、彼はその手を取って口に含んだ。
なるほど。うん、……なるほど?
いや、思春期である事は理解した。彼の舌の感触に反応してしまった私に問題があるだけだ。
「具体的に、君は私にどうしたいのかな?」
「分からない。分からないんだ。あなたがすきだ。愛している。なのに貪りつくしてしまいたくて仕方がない。ただあなたがほしくて、ほしくて、——」
喰われる、と思った。
実際肩口を噛みつかれ、酷く出血した。
恐らく彼はそうしたいからそうしただけで、意味も理由もないのだろう、と思う。だが、まだあどけない彼であるけれど、手首を強く握られ身動き一つ取れなくなってしまった。
私は!
いくらメカクレでも!
少年少女を穢すつもりはないんだ!
メカクレは愛でる対象!
性的な意味はない!
「バート、私が少し大きくなって抱きしめてくれなくなった。大きな私が好きなのは知っている。だが、私は?大きくもなく、小さくもない私は?」
「可愛いと思っているよ。本当だ。大きくても小さくても君は可愛い。私の可愛い人。パーシィ、ごめんね、不安にさせたね。抱きしめてあげなくてすまなかった。大人の君とする事もしてあげられない。君の純潔を奪うのは君がちゃんと大人になって騎士になってからだ」
壁に立てかけられているロンギヌスは本来のサイズより一回り程小さいだけだ。もうすぐパーシヴァルは元に戻る。
「ほら、キスしてあげようね。大人のキスだ。……やり方は分かるね?」
私は口を開き舌を出した。
彼は言葉通り貪りついてきた。
辺りに散らばるのは——これは、流石に私でも分かる。真っ赤な薔薇だ。
一体本数は何本になるのだろう。確か薔薇は本数で意味合いが変わるのだとか。
一度、唇を離しベッドへと押し倒された。
そうして再び口付けられる。
その間も絶え間なく花は降り注いだ。
うん。15歳のメカクレも素晴らしい。
そこからの記憶はない。
後から聞いた話では、どうやら私は魔力切れを起こし気絶したらしい。
いやはやしかし、青年から大人に変わる瞬間の真下から見るメカクレもなかなか良いものだった。
もうすぐ全てが解決しそうだ。
残りは後日、纏めて記そうと思う。