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    j_gg0r

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    j_gg0r

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    恋したいバと愛したいパ卿がお付き合い始めるまでの話。
    過去、バが遊び人だった描写があります。

    含まれるもの:バの一人遊び

    ※非常に非常に時間がかかり、ワンドロとしての定義を大きく逸脱してしまったのでタグ付けしておりませんが、お題を使用した形跡があります。いずれまた挑戦したく思います。

    ▪️1


    ドバイから帰ってきて、まず最初にした事。
    それは今まで関係を持ってきた数多の男に別れを告げる事だった。一晩だけの共であったり、二度三度続いた仲もある。サーヴァントから、カルデア職員まで、それは多岐に渡った。
    私はその一人一人にもう二度と関係を持つ事はないから誘ってくれるな、と話し合いをした。
    ——彼はきっと、こういうの嫌いだろうから。

    別に彼と恋仲になった訳ではない。
    けれど、私がそうなりたいと、——彼に恋をする資格が欲しいと望んだ。彼の隣で胸を張って居られる者でありたかった。清い者の側に居るには、清い者であるべきだと思った。
    私は奪って奪って奪って最後には奪われる事になった海賊ではあるし、彼とは真逆の混沌悪でもある。だが、正当な手段を踏んで彼を手に入れたいと思った。
    想いを通じ合わせて、手を繋いで、口付けて。
    そう言った事を彼としたいと思った。
    純粋無垢な、児戯の様な恋がしたいと思った。

    もっとも、関係を絶ったとして彼がそれを知る事もなければ、知ったとてそれを許すとも思えない。すべては自己満足だった。
    それでも構わないと思った。一夜の快楽に溺れるより、彼と愉悦じみた行為を行わず側にいる方がいい。
    この恋が実らなくとも、私にはまるで関係がなかった。
    私はただ、恋がしたいと思った。





    ▪️▪️

    「私は君が好きだよ、パーシヴァル」
    「どうしたんだい、突然。私も貴方が好きだよ?」
    「違う、……恋愛的な意味で、だ」
    「それは……」

    そう、戸惑うのが普通だ。
    男女問わず、といった人物とパーシヴァルは違う。海賊に愛を説かれたとて信用には足らないだろう。
    私が逆の立場でもきっとお断りする。
    それこそが私の知っているパーシヴァルだった。清廉潔白で、何者をも愛し、何者をも護る。
    そう言った君だから私は君を好きになったんだ。私は、無条件に私の手を取るパーシヴァルの事を好きにはならない。

    「私は貴方の友でありたい。そう言った意味で貴方が好きだ。それでは駄目かな?」
    「有難う、パーシヴァル。そうだね、私と君は友人だ。時を超えて出会えた、ウェールズの友だ」

    友だよ。そこは間違っていない。ただ、私が友以上の感情をパーシヴァルに抱いてしまっただけで。騎士たるパーシヴァルを友だと思えなくなっただけで。
    私を突き放す事も出来ない彼を愛おしく思う。
    分かっていても、口に出す事を止められなかった私をどうか許して欲しい。
    けれど、私の恋心をきっぱりと拒否してくれた事には安堵した。それでこそパーシヴァルだ。



    ▪️

    「ん、ふ……っあ、アあっ……」

    一夜の快楽を共にする相手を全て切った以上、性処理は一人で行うしかなかった。
    己の尻に指を埋め、最短距離で快楽へと直走る。パーシヴァルを思い出すのが一番手っ取り早かった。彼の指が埋められている想像をするだけで、いつもより早く達する事が出来た。

    「あ……ッ、パーシ、……っ……、」

    ああ、汚れたのが自分の手で良かった。私の中のパーシヴァルはいまだ純潔のままだ。私が穢して良い物ではない。
    この涙は射精に伴うものであって、パーシヴァルを思ってのものではなかった。いっそ、気味悪がってくれれば私は思い切り泣く事が出来たのに。
    そうして一頻り泣いて、何事も無かったかのように日常的に戻る。——手酷く振ってくれさえすれば、そんな事も出来たのに。
    彼は優しかった。そう、誰にでも優しかった。だから誤解してしまったのだ。私を見るあの熱い眼差しも微笑みも、きっと他の人間にも等しくしていた筈だ。だって彼はそういう男だから。

    いくら彼が優しい男だからと言って、昨日までと同じ様に振る舞える自信はない。
    彼は優しく私を振ったけれど、内心では裏切られたと思っているかも知れない。私はなるべく彼の前に姿を現さない様に心がけた。



    数日経って、パーシヴァルが私の事を心配している、と人伝に聞いた。姿が見えないから、と。
    それもそうか。今まで日に何度も顔を合わせていたのだから。
    パーシヴァルは友としての私を望んでいるが、私はまだパーシヴァルを友とは思えなかった。振られてもなおまだパーシヴァルが好きだ。清廉な騎士が好きだった。まだ彼に恋をしていた。
    だからこそ顔を合わせたくはなかった。
    どうやらあの騎士様にはそこまでの機微を理解する事は出来なかったらしい。

    そもそも私は打算的で、人の感情をも計算して動くタイプの人間だった筈だ。それが彼の前では出来なかった。ただただ本心を曝け出してしまった。
    そのせいで、彼に悲しい顔をさせた。
    友と慕う者の感情を否定させてしまった。
    そこは申し訳なく思う。だが、私はこれでも大隊の船長を務めていたんだ。己の感情さえ切り捨てる事は容易だ。
    パーシヴァルのことを好きじゃなくなったフリなんて、簡単な事なんだ。
    私の事を好きだと言うパーシヴァルの事はきっと好きにはならない。だからこそパーシヴァルが好きだ。
    叶わない恋だ。
    彼の騎士らしい横顔が好きだった。私ではないものを見ている彼を乞うていた。

    ——などと、言い訳をつらつら思い浮かべてはみたものの、やはり悲しいものは悲しい。
    普段通り笑っているつもりでも、客観的に見ればそうではなかったらしい。

    「大丈夫か」
    「有難う、私はいつも通り元気だよ!」
    「……見るに耐えんな、お前がメカクレを謳わない時点で大丈夫とは程遠い」

    カルナは平素の霊衣ではなく、サンタカルナだった。確かにサンタカルナになった彼を見る度に彼のメカクレを褒めていた。少年少女でなくともメカクレは至高。
    だが、私はカルナがメカクレであると言う事にさえ気が付いていなかった。
    思ったより重症であるらしい。
    海賊船の中では様々な病が流行ったものではあるが——あれと同じくらい厄介なものに罹ってしまった。おまけにこの病は医者が治せる見込みもない。

    「……有難う、カルナ」
    「うむ。だが、そろそろ顔を見せてやった方がいい。向こうは向こうで寂しそうだからな」
    「はは、そうだね。そうするよ」
    「……その内部屋を訪ねそうな気はするが」
    「彼らしいね」
    「俺は忠告したからな」

    カルナの苦虫を噛み潰す様な表情を見たのは初めてだった。
    だからこそ、カルナの忠告は素直に聞くべきだった。珍しくカルナが難しく言葉を発さず、直接的な表現で私に告げていたのに私と来たらそれにすら気付かぬ程パーシヴァルの事ばかり考えていたのだった。





    ▪️

    今日も今日とて、己の手で空いた穴を埋める。
    心の代わりに、肉体を。

    「ン、ぁ……パーシヴァル……、」

    自慰の最中にパーシヴァルの名を呼ぶ事にももう慣れてしまった。これでは忘れる気があるのかないのか。本末転倒だ。
    それでも彼の名を呼ぶだけで身体が震えた。本人の前では、彼が望む様に友として振る舞っているのだから許して欲しい。

    コンコン、と遠慮がちに扉が叩かれた。
    サーヴァントの部屋には鍵がない。どうしても掛けたい場合は魔術を用いて簡易結界を張る事も可能だったから特に不便を感じた事はなかった。今の今までは。

    「——バーソロミュー?開けるよ?」
    「待っ、」

    今は、拙い。
    己の尻に指を埋め、快楽に浸る様など友は見たくはない筈だ。友の性事情など知りたくないのが人の常だろう。
    返事をする前に開けるのはマナー違反だよ、パーシヴァル!
    扉が開かれていく様は酷くゆっくり見えたが、その間私はまるでスタンでも掛けられたが如く動く事が出来なかった。
    カルナも言っていたのに。「——そろそろ部屋を訪れてそうな気がする」、と。あれはカルナなりの忠告だったのだろうと思う。

    「バーソロミュー、話、が……あ……その、」
    「……申し訳ないと思うなら、今すぐその扉を閉めてくれないか」

    そうして、パーシヴァルは私の部屋に入り、言われた通り扉を閉めた。出ていけ、と言外に伝えたつもりだったが聞き流されてしまった。
    私は仕方なく指を抜き、ボトムを履いた。立ち上がったままの一物やローション塗れの太ももの上から履くのは気が引けたが仕方がない。さすがに下半身を曝け出して話をする気にはなれない。


    「……話って?」
    「最近顔を合わせる機会がなかったから、……その、……すまない」

    パーシヴァルは私の顔を見に来た筈なのに、私を見ようとはしなかった。それはそうだ。友の自慰を見て気まずくならない訳がない。
    だが、よく見れば彼の頬は紅潮していた。いつも流暢に話す彼が言葉を選んで話している。
    何より、彼の下腹部は布を押し上げ、己を主張していた。

    「すまない、は何に対して?扉を開けた事?自慰を見た事?……それとも、反応してしまった事?」
    「全部だよ、友の自慰を見て私は、私はなんと言う……これでは清廉潔白とは程遠い」

    清き愚か者。
    パーシヴァルはそう呼ばれて久しいが、まさしく彼の全てを表していると思う。

    「同じ男同士だ、純潔を枯らした判定にはならないと思う。……試してみるかい?」
    「……なに、を?」
    「おやおや、分かってて言わせるとはなかなか騎士様もいい趣味をしてるじゃないか」
    「それは、貴方を抱く、という意味かな」
    「試し、だよ。無理だと思ったらそこで止めればいい。どちらにせよ、そんなに大きくさせてたら、歩きにくいだろう?」
    「貴方はそれでいいのか、自暴自棄になってるのでは?」
    「君がそれを言うのかい。……慈善事業だよ、友の自慰を見て欲情した騎士様への施しだよ——」

    わざと罪悪感を感じさせる様な物言いをした。
    本当は普通に接したい。だが無理だった。居た堪れない。やはり自慰の最中に名前など呼ぶものではなかった。
    別にパーシヴァルに抱かれたいと思って言っている訳じゃない。ただ、気恥ずかしくて今すぐこの場から去って欲しいだけだ。
    嫌われてしまえばきっとここから去ってくれる。マスターの前でだけ楽しげに笑っていればそれで事は済む。嫌われて去られても、抱かれても、どちらにせよ私は友を失う。仕方のない事だ。もうどうしようもない。
    もう一度、夏に戻れたら。そうしたらきっと今度はきちんと最初から友になれるだろうに。恋心など抱かずに——抱かない様に細心の注意を払って接するのに。

    「——どうする?」

    どうか早く、恋に恋する憐れな男の為に終止符を打って欲しい。
    私は君の望む友にはなれない。









    ▪️▪️▪️


    ▪️2.


    バーソロミューに好きだと言われた。私は友でいたい、と彼の告白を無碍にした。
    その直後から彼と顔を合わせる機会がなくなってしまった。流石に疎い私でも分かる。私はバーソロミューから避けられていた。

    バーソロミューから好きだと告げられた時、私は歓喜に震えた。本当は私も彼を愛していたから。
    友で居たいだなんて詭弁だった。彼と恋仲になりたかったし、手を繋いだり、キスをしたり、とにかく彼に触れられる理由が欲しかった。
    だが、それは出来なかった。
    彼は、彼を愛している私を好きにはならない。清廉潔白と謳われる円卓の騎士に恋をしているだけだ。私自身を好いている訳ではない。
    だからこそ、私は己の心を偽った。彼を傷付けてでも私を好いたままでいて欲しかった。そんな感情を持ち合わせている事などきっと彼は知り得ないだろうし、隠し通す積もりでいる。
    いずれ私への恋心がなくなって、他の人間に恋をする様になるまでは私を見ていて欲しい。

    何が清廉潔白だ。
    何が清き愚か者だ。

    私はただの愚か者にしか過ぎない。
    バーソロミューに気持ちを告げられてからと言うもの、私は夜な夜なバーソロミューの裸体を夢想する様になった。美しいあのチョコレート色の肌に指を滑らせ甘く蕩してしまう様を妄想した。その度に私の下腹部は反応を示した。

    「お前が拒絶したんだろう。なぜそんな顔をしているんだ?」
    「痛い所を突くね、カルナ。うん。痛いな。……痛い」
    「自傷した傷の手当てをするつもりはない。そんな顔をするなら素直にバーソロミューを受け入れたら良かっただろう」
    「受け入れたら、きっとバーソロミューは私を好きではなくなる。笑ってくれ、手に入れてから離れられる方が辛い」
    「なんだ、自信がないのか。お前はバーソロミューを手に入れたらそれで終わりか?」
    「きっとずっと好きだよ」
    「ならばそのまま伝えるべきだ。手離されない様に努力すればいいだろう。ウジウジしているお前は、……お前らは見たくない」

    話をしに行こう。
    友でいたいという気持ちは嘘ではない。だが本当でもない。
    言葉を尽くして彼に私の気持ちを理解して貰いたいと思う。



    ▪️

    「バーソロミュー、話が、」

    ノックはしたものの、返答はなかった。中にいる気配はするのに返答をしたくない程私は嫌われてしまったのだろうか。
    ここで引き返してしまえば私は二度と話しに来る勇気は湧かないと思う。
    サーヴァントの部屋には鍵はない。
    私は意を決して扉を開いた。

    ーーそこには自慰行為に勤しむバーソロミューがいた。己の尻を己の指で解し、喘いでいた。
    私の妄想が現実になってしまったのかと思った。忌避感はなかった。それ所か私の下腹部は立ち所に反応を示し、きつく張り詰めた。

    謝罪しようとすると扉を閉めろと言われた。
    暗に出ていけという意味だろう。私はその意味に気付かないふりをして部屋に入ってから扉を閉めた。

    それから、自嘲したバーソロミューは投げやりに私を伽へと誘ってきた。
    そんな物言いをさせてしまったのは私だ。私の言葉が足りなかったせいだ。

    「ーーどうする?別に私はどちらでも構わないよ。私を罵って友を一人失うか、私で発散して友を一人失うか、好きな方を選ぶといい」
    「友を失うのは嫌だ」
    「傲慢な騎士様。……自分を振った男の側にいるのが辛いだなんて君はきっと知らないんだろうね」

    私はこれ以上バーソロミューから自虐的な言葉を聞きたくなかった。
    己の唇を用いて彼の口を塞ぎ、そのままベッドへと押し倒した。

    「ッ、は……、そりゃあどうせ失うならそっちの方を選ぶか。清廉な騎士様らしからぬ判断だ」
    「騎士としてではなく、パーシヴァルとしての判断だよ。貴方が恋する騎士ではなく、ね」
    「どういう意味だ」
    「貴方は私ではなく、騎士に恋しているだけでしょう?」
    「言葉遊びをする積もりはないよ。はっきり言ったらどうだい。それとも始める前にそういう事言うのが円卓流なのかな?」
    「私は貴方が好きです」
    「は?君が言ったんだぞ、友で居たいって」
    「言ったよ。前言撤回しに来たんだ」
    「えぇと、別にこんな即物的な行為にムード作りとかは必要ないよ。どこかの姫様じゃなく私相手だ、さっさと突っ込んで出して帰ってくれ」

    どうやらバーソロミューは私の言葉をただのリップサービスだと思っている様だった。
    雰囲気作りの為に口にしているのではない。バーソロミューの肢体に興奮は覚えるが、そんな行為をしなくとも私は別段構わない。欲しいのはバーソロミューの心の方だ。

    「嫌だ!私の話を聞いてほしい、貴方を傷付けてしまった。私の言葉が足りなかった。私は貴方から好きだと言われて嬉しかった。でも貴方は私が同じ気持ちだと返せば離れていくでしょう、貴方の思う騎士から掛け離れた私から貴方は逃げるでしょう。私はそれが怖かった」
    「それは、どういう、」
    「貴方が私を好いてくれているのは本当だと思う。でも、私と結ばれる想像なんてしてなかったでしょう。私は貴方と生きたい。貴方にもそう望まれたい」
    「……確かに、私を受け入れる君の事を好きにはならなかった、と思う。でも振られて悲しいのも事実だよ」
    「ならば、貴方を受け入れる私を好きになって貰える様に努力するよ。騎士としてではなく、私を——ただの一人の男として愛してほしい」
    「物語の騎士を重ね合わせただけの児戯的な好意を向けられて……、偶像崇拝の様な真似をされて怒らないのかい」
    「騎士パーシヴァルも私の一部だからね。私の一部に惚れてくれたのならばいずれ私のすべても好いてくれると思う」
    「アッハハ!すごい自信だな!」
    「私は貴方が好きです。ずっと好きでいる自信がある。……あの夏、恋に落ちた日から私は己の気持ちを隠してきた。でも、貴方からの好意の鱗片を頂いた。逃す筈がない」
    「狙われた獲物ってこんな気分なのかもしれないなぁ」
    「私はあの夏を終わらせたくない。ずっとあの夢の様な時を味わいたい。出来れば独りよがりではなく、同じ気持ちになってほしい」
    「ではとりあえず、君のお手並み拝見と行こうかな。私は恋に肉体関係は付きものだと思ってる。清廉潔白な騎士様は私を抱けないと思っていたから。だから私は己に君を好きにはならないって思い込んで諦めた。……本当に君、私を抱けるのかい?」
    「貴方を愛する許可を頂けるのなら、貴方の身も心も愛し尽くしたい、と。そう思っているよ」

    私はバーソロミューの手を取り、口付けた。
    私とて言葉では言い表せない気持ちをバーソロミューに伝えるべく、抱きたいと思う。

    「うん。いいよ。目一杯私を愛してほしい。パーシヴァル。君の騎士らしからぬ所を見せてくれたまえ!」

    私は頷き、再度口付けた。
    私の全てを一つずつ知って、私の全てに恋をして欲しい。

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