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    ゲンソたい 妄想

    遭遇(MoとAg)「あっ」

    っと彼、モリブデンは目の前を横切っていったスーツ姿の男を目で追った。
    彼普段見ない姿だったために暫くの間警戒していたが、そうか、今日は確か各部の報告と予算についての会議があったのだ。おそらくそれで来訪した関係者だろう、と合点がいった。時刻はまだ午前9時、会議まではあと1時間ほどあるはずである。が、その男はふらふらと歩きながら施設をそれとなく眺めているようだ。

    「おはようございますっス。どうかしたんスか?」
    「‥‥」

    明るく声をかけるも男は変わらず施設の一角を眺めているようである。

    (‥‥聞こえなかったのかな)

    「あ、あのー?」
    「あぁ、僕に言ってる?」

    スーツ姿の男は顔だけゆっくりと少し振り向いて彼の方を見た。へらりとした表情でいくらか優しそうである。しかし、こちらに差程興味は無いようだ。

    「俺はモリブデンっス。会議関係者の方っスよね?」
    「はは、聞いてもないのにわざわざ自己紹介ありがとう。うん、その通り。何?ご名答とでも言ったらいい?」
    「えっ、いやそんなつもりは」
    「冗談」
    「なっ‥」

    男はまた壁に視線を戻す。
    温厚なモリブデンですら、これには少し不快感を抱いた。なんだろうかこの猫は、些か失礼なのではないか、と疑問を抱きつつ再び男を見た。男は声色表情何1つ変えない。
    よく見ると首から下げた名刺入れには「Ag」と書かれているのが見えた。暫くして男が口を開く。

    「アンタ目は良いか?」
    「え?まあ悪くないと思いますっスけど」
    「あの天井の左奥に何か見えるか?」
    「天井?」

    モリブデンは目を細めて5mは高い天井を見る。すると、分かりづらいが天井の左奥側にダストと思われる小さな入口があるのを捉えた。おそらく屋上か上の階に繋がっているのだろう。

    「何かダストっぽいものが__」

    と言い終わる前にそれは他の声に遮られた。

    「へぇ、"まだ"あるんだ」

    と男は勝手に理解してしまったらしく、お礼も言わずにどこかへ歩き始めた。

    何が何だか分からず、ただ男を見ているモリブデンに今更気づいたのか、10歩ほど歩いたところで男は足を止め、振り向き一言

    「僕、アンタみたいな子は好きだよ。
    なんていうか、すぐ死にそうで」

    と言い残し、またふらふらと奥へ歩いていった。
    それを、彼はただただ唖然と立ち尽くして見つめている。

    「‥‥一体なんだったんスか‥‥」 (終)
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